第6話 お姫様は淡々と攫われたい。
「ええい、お前らガタガタ騒ぐな。考えてもみろ、相手は娘っこ一人だぞ。それに、お姫さんだ。俺たちは10人以上いるんだぞ。怯むとか恥だろう!」
リーダー格の男が腹の底から怒鳴りつければ、逃げ惑う男たちもお互いの顔を見合わせて、それもそうかと応じる。
「野郎ども、構えろっ。お姫さんに破落戸の意地ってもんを見せてやれ!」
思い思いのナイフや剣を手にした男たちが、じろりとルエットを睨み付けてくる。
気迫満々で、普通の男でも竦みあがるほどの殺気に満ちていた。先ほどの逃げ惑う姿がなければルエットも多少は怖がったかもしれない。
「お姫さん、本気でやる気か? 俺だってこの界隈じゃあちっとは名の知れた男だ。『栄のモンゴ』と言えば俺のことよ」
「サカエって何かしら?」
「盛んな様子だってことだ。それをちょっと二つ名みたいに使ってるだけなんだから、茶々を入れんなっ。兄貴が可哀そうになるだろうが!」
リーダー格の男がしゅんと肩を落とした。
周囲の男たちが慌てて宥めている。
「あ、兄貴! 俺は格好いいと思いますぜ。あのお姫さんは学がないんだ」
「そうだ、そうだ。頭の悪い姫なんだよ」
「二つ名ってぇのはどうやったら広がるもんなんだ…」
「そりゃあ、名乗ってればいつか報われますよ!」
ルエットはぴしりともう一度、地面を叩きなおした。
「はあ、空気を壊して悪かったわね。ですからきちんとお相手するわ。全員でも結構よ?」
「そんな大口叩いて、後悔するなよっ」
はっとしたリーダー格の男が吼えながら剣を構えて突っ込んでくる。他の男たちも同様だ。
ルエットは鞭をひと降りして、男の手から剣を奪い、別の男のナイフを叩き落とし、他の男の手を切り裂いた。
「ぎゃあ!」
「痛いっ」
「ひええっ」
「くそっ、やられた!」
「ぐふぅっ」
そのまま丸腰になった男たちの顔面に飛び蹴りを食らわし、反動で別の男の鳩尾に拳を叩き込む。
そのまま宙返りしながら鞭を振るう。
しなる鞭は、男たちから武器を奪い服を裂き肉体を傷つけた。鮮血と怒号と悲鳴が飛び交う中、ルエットは淡々と行動に移した。
「私を攫えるほど腕を磨いてからやってきなさいな!」
「俺たちはお姫さんを攫いにきたんじゃねぇぇぇ!!」
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