第2話 憧れの出会い
青色の軽装に包まれているその体は細身。
動きやすくする為か纏っている鎧は少なく、体のしなやかなラインもわかりやすい。
腰までまっすぐ伸びる金髪は、輝いて見えるのほど美しい。
おしとやかな彼女は見惚れてしまいそうな赤い瞳で倒れている僕を見つめる。
「やっぱり、アレスなんだよね。」
「そういう君はエリスちゃん……なんだね。」
情けない姿を見られてしまった。
僕は起き上がり、正面からエリスちゃんを見つめる。
僕の方が背は大きい。それでも彼女はあの怪物を一撃で倒してしまった。
「–––––まさか、冒険者になってるなんてね。」
「そう言うアレスは王都にやって来てるなんて。全然知らなかった。」
「そりゃあ、教えてないからね。」
そう言って僕は苦笑する。
以前までのエリスちゃんは明るく活発的な女の子と言うイメージがあったが、今は冷静で、物事をちゃんと見ている大人な女性な感じだ。
「変わったね。エリスちゃん。」
「そう言う君は変わらないね。アレス。」
「––––––––。」
悪意の無い言葉が僕の胸を抉った。
この五年間の間で彼女に何があったのかわからないが、こんな力を身につける程、努力はしてきたはずだ。でも僕は何もしてこなかった。ただ願うだけで………。
「終わったか。エリス。」
僕の背後から、男の声が聞こえてきた。
「あっ、ヴァレス。」
長い耳をしたヴァレスと呼ばれた男は落ち着いた様子で返事をする。
「ん、君は?」
ヴァレスさんは僕の方を見て呟く。
「彼はアレス。アレス=ガイア。私の幼馴染。」
「そうか。僕の名前はヴァレス=ライオットだ。よろしく。」
「–––––ヴァレス=ライオットってあ、あの、アストライオスギルドのだ、団長ですよね!?」
アストライオス。そのギルドは強者揃いで、ギルドの中でも最強と呼ばれている。僕の憧れのギルドだ。
「あ、あぁ。そうだ。」
「はああぁ………。」
「–––––それで君はソロのようだけど、もしかして無所属かい?」
「え、あ、はい。無所属です。」
「なんでアレスはギルドに入らないの?」
「………こんな弱虫。誰も入れてくれないんだよ。」
苦笑しながらそう言う。冒険者になった当初はギルドを探したがどこのギルドも僕を入れてくれはしなかった。
弱いままじゃ入れないと悟った僕は探すのをやめてこうして強くなろうとしている。
「ねぇ、アレスをアストライオスに入れてあげてもいい?」
「うーん。いいよ。入るかい?」
「えっ………?入るってあのアストライオスに?」
「それ以外に何がある?」
「…………ええぇぇぇぇっっーーー!!?」
僕はヴァレスさんの提案を聞き、数秒の間思考が停止していたが、ようやく言われた言葉を理解し、絶叫する。
えっ、ぼ、僕があの最強ギルドとも言われてるアストライオスギルドに!?しかもその団長に入団を許可されてる!!?
と、というか会話の流れ的にえ、エリスちゃんってアストライオスギルドの団員なのか!?
「ええぇぇぇぇぇぇっっっーーー!!?」
「あははは。君はよく叫ぶね。」
「そりゃあ叫びますよ!だ、だってアストライオスギルドに入っていいなんて……っ!!」
「本当は条件に達して無いと無理だけど、エリスの幼馴染の君は特別に入れてあげるよ。」
「ほ、本当ですか!!」
「うん。本当。」
ま、まさか、最強ギルド。アストライオスギルドの団長本人に入団の許可を貰えるなんて………。これでも僕不幸E+のレアステータスを持ってるはずなんだけどな。
一旦落ち着くように深呼吸をする。
––––––こんな機会。もう二度とやって来ないかもしれない。でも、僕は。
「………やめておきます。」
「………理由を聞いてもいいかい?」
「本当は凄く入りたいんですけど、でも卑怯だなって思ったんです。実力も無いのに、幼馴染っていう理由で入れるようになるのは。だから、ちゃんと実力を付けて、条件に満たしてから入団させてください。」
「––––––そうか。君は偉いね。」
ヴァレスさんは微笑み、僕の頭を撫でる。
「あ、ありがとうございます………。」
「君の成長を待ってるよ。」
「……それじゃあ帰ろうか。」
エリスちゃんがそう言い、王都へ歩いていく。
ヴァレスさんも「そうだね。」と言った後、エリスちゃんの後について行く。
僕も着いて行くべきだと考え、ついて行こうとした時。
「ん?」
消滅したマンティコアの辺りにとある物を見つけた。
「これ、マンティコアの爪だよね。」
凄くレアとされるマンティコアのドロップアイテム。売れば金になるし、鍛冶屋に持っていけば凄い武器になるかもだし。
「エリスちゃん。これ落ちてたよ。」
「ん、これは……マンティコアの爪?」
「うん。凄くレアなんだよね。」
「それ、あげるよ。」
「えっ?」
「こんな所までマンティコアを呼んじゃったお詫び。」
「そんな……。いいよ。」
「君には強くなって欲しいからあげるよ。」
………エリスちゃんは頑なに渡そうとしてるな。
「うん。ありがとう。」
僕は諦めて大人しく受け取る事にした。
きっと僕は今日の出来事は忘れる事は無いだろう。
僕はマンティコアの爪を握りしめ、二人の後をついて行った。
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