水金地火木土天海冥の王

渋谷かな

第1話 水月蒼

 水月蒼は普通の16才の高校生。ある雨の日、自分の世界が変わって見えるようになった。

「あり得ない!?」

 道を歩いていた蒼は水たまりにはまる。すると目の前を河童が歩いている。他にも全身水の塊も歩いている。空気の中を魚が泳いでいる。

「俺は頭がどうかしてしまったのか!? ここはどこだ!?」

 蒼は自分自身を疑ってしまう程に衝撃を受けている。

(ここは水の世界。現実であり、現実でない世界です。)

「水の世界!? 水の中なのに息ができる!?」

 その時、どこかからか女の声がする。蒼は水の世界でも苦しくなかった。

(あなたは水の王になるお方なのです。)

「誰だ!?」

(私は水の精霊ウンディーネ。あなた様にお仕えする水の精霊です。)

 現れたのは水の精霊ウンディーネだった。

「水の精霊ウンディーネ? 俺が水の王になるとはどういうことだ?」

(水の宿命を持って生まれてきたのです。)

「水の宿命?」

 蒼には何が何だか分からない。

(この世界には伝説があります。悪しき者が甦りし時、世界を救う古の侍忍者も甦ると。それが水に選ばれし者。マスターなのです。)

「ちょ、ちょっと待ってくれ!? いきなり過ぎて、全く話が見えないんだが!?」

(その証拠が腰にある刀です。)

「ウワア!? いつの間に!?」

 蒼の腰に刀が装備されていた。

(その刀は水刀。マスターはこれから水竜と戦わなければいけません。)

「はあっ!? なんで俺がそんな化け物と戦わないといけない!? それに刀なんて使ったことはないぞ!?」

 今時の普通の高校生は刀、日本刀、剣。それに魔法や忍術など使ったことはないのだ。

(水竜を従わせるだけの力を示さなければ、水の王にはなれません。)

「だから! 誰も水の王になるなんて言っていないだろうが!」

(これも運命です。)

 全ては運命の一言で片付いてしまう。

「で、水竜はどこにいるんだよ?」

(はい。マスターの目の前に。)

「え?」

「ギャオオオオオオオオオー!」

「りゅ、りゅ、竜!?」

 竜の雄叫びが聞こえてくると共に巨大な水の竜が蒼の前に姿を現す。

(おまえが新しい水王の候補者か?)

「竜が喋った!?」

 蒼は竜に驚き、言葉を発したことにも驚く。

(水王になりたければ、汝、我に力を示せ!)

「力を示せって言われてもどうやって!?」

(戦うんです。水竜と。私がサポートします。)

「そんな無茶苦茶な!?」

 蒼はウンディーネに助けてもらいながら、水竜と戦うことになった。

(まずは刀を抜いて構えてください。)

「こうか?」

 蒼は腰の刀を抜いて構える。

(いくぞ!)

「ギャオオオオオオオオオー!」

 水竜が強烈な水を口から放つ。

「し、死ぬ!?」

 一瞬で蒼は死を悟った。

(水忍法! 水化の術!)

 水の妖精ウンディーネが忍術を唱える。

「ウワアアアアア!? ・・・・・・あれ? 死んでない?」

 水竜のウォーター・ブレスを食らっても蒼は平気だった。

「なぜ? 俺は死んでいない? ・・・・・・何!? 俺の体が水になっている!? 」

(マスターは忍術で水になったのです。)

 手と手を触れた蒼の体は水になった。

「これが忍術!?」

(そうです。マスターは水の王になられるお方。雨を降らしたり、水の上を歩いたり水の忍法は何でも使えます。)

「すごい!? まるで魔法みたいだ。」

 魔法使いになったような気分の蒼。

(マスターなら何でもできますよ。きっと水竜にも水の王だと認めさせることができるはずです。)

「よし! やってやるぞ! 俺ならできるはずだ!」

 ウンディーネに励まされた蒼は刀を構え正面から水竜と向き合う。

(やっと私と戦う気になったか、そうでなければな!)

「ギャオオオオオオオオオー!」

 再び水竜が水を吐き出し攻撃してくる。

「俺は水の王になる男だ。なら水くらい斬れるはずだ。」

(マスターの心が水と一体化している!?) 

 蒼は刀と心を共鳴させ一つになろうとしている。

「水よ! 俺に従え!」

 刀が水竜の水を吸収していく。

(バカな!? 我が竜水を吸ったというのか!?)

(やはりマスターは水の王になられる方だ。)

 その光景に水竜、ウンディーネは衝撃を受ける。

「刀の形が変わった!?」

 水刀が水竜の力を得て水竜刀に進化する。

「俺の刀に水の力が宿ったみたいだ!? これなら勝てるかもしれない!」

 蒼の刀に水竜の力が湧いている。

「くらえ! 水竜斬!」

 水竜刀から水の竜が現れ斬撃として水竜に襲い掛かる。

「ギャオオオオオオオオオー!?」

 水竜に水竜をぶつける。

「やったか!? ・・・・・・なに!?」

 しかし水竜は平然としていた。

(おまえの力は見せてもらった。いいだろう。おまえを水の王の候補者と認めよう。)

「水竜、ありがとう。」

 蒼は水竜に水の王の候補者と認めてもらえた。

(良かったですね。マスター。)

「ありがとう。これもウンディーネのおかげだよ。」

 嫉妬深い水の精霊ウンディーネに感謝する蒼。

(マスターはこれから、剣術、忍術を鍛えて一流の侍忍者にならなければいけません。そして水の全てを司る水の王になり、悪しき者から世界を救うんです。)

「ああ、がんばるよ。」

 水月蒼は水の王への道を進み始めた。

 つづく。

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水金地火木土天海冥の王 渋谷かな @yahoogle

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