第13話 放課後のお出かけ 2
「それにしても二人でこうしてここに来るのは久しぶりだね」
「そうだな」
「なんで江口さんと友達になったの?」
俺は少し考えた。
「特に深い理由はないかな」
「嘘。本当は?」
「さよ……」
川の水を見ながら、福永が呟く。
……でも気持ちはわかる。
もし俺が逆の立場だったら、やっぱり気になるし、知りたい、って強く思ってしまう気がするから。
「嫉妬はするけど怒らないって約束するから教えてくれないかな」
「昔の俺とさよみたいなだなって思って。俺達ってさ、さよが俺に告白してくれてから今まで以上に仲良くなっただろ?」
「そうだね。だって自分の好きな人って基本的に片想いの時って超極秘情報じゃん、やっぱり恥ずかしいから。でもさ、それまで暴露しちゃうともう殆どのことがさ今さらってなったんだよね。お互いに好きな人を暴露し想いを告白して、お互いに傷つけ傷付きあった。そこまでくるともう壁がなくなると言うか。だから嫉妬、怒り、妬み……後は好意とかさ、ありのままで向けていいかなって。それでも私はね、湊ならこんな嫉妬深くて甘えん坊でたまにお姉ちゃんをする私を受け止めてくれるし、認めてくれるんじゃないかなって信じてるんだ」
「だよな……俺もそんな感じ」
「本当?」
「あぁ。今は二人に気持ちが揺れている。だけどもしさよか江口どちらかに気持ちが固まった時はもう一度ちゃんと告白しようって思ってるんだ。それから江口と友達になった理由だけど、江口に友達からどうかしら? って言われたんだ。だから――」
俺は福永にありのままの気持ちを伝える。
今めっちゃ、福永と心が通じ合っている気がする。
お互いのありのままの気持ちを伝えても俺と福永はこうして仲が悪くなったり気まずくなることはなかった。むしろ逆に仲良くなった。だから俺は今日もこれからも福永の前では素直になろうって思えた。
現実ってさ予測不可能な事で満ちあふれているんだぜ。だから俺と福永には俺と福永にしか築けない二人だけの関係ってのもやっぱりあると思うんだ。
「――謝るのはなしだよ。なら私にも今はチャンスがあるってことだよね?」
俺の言葉を先回りして福永が言った。
「まぁ……そうなるかな」
「私にもようやくチャンスが回って来た。そう思ったら私にとってはプラスなんだよ。だから謝らなくて良し!」
俺が試しに福永の方に視線を向けると、嬉しそうにニコッて笑いながら言ってきた。
「それにさ、本当はね曖昧な気持ちでは付き合いたくないんだ。昨日は曖昧な気持ちでもいいって言ったんだけどさやっぱり彼氏彼女になるなら、私だけを見て欲しいんだよね。だから気持ちの整理がついたらさ、私に告白してよ」
「さよ……」
「私頑張るから。やっぱり俺の隣にはさよしかいねぇって思われるようにありのままの私で頑張るからこれからは一人の女として見て欲しいな?」
こんなに真っすぐに来られたら男として答えないわけにはいかない。
「わかった」
すると福永が興奮気味に語り始めた。
「ならさ、ちょっとだけズルしてもいい?」
「例えば?」
「そうだねー、なら湊の家に今から行かない?」
「別にいいけどなんで?」
「ひ・み・つ!」
「秘密って言われたら気になるんだけど」
「行ってからのお楽しみ。私今めっちゃドキドキしてるよ。ようやく好きな人に女として見てもらえてるって思って、だからチャンス頂戴!?」
「わかった、なら家行くか」
「うん」
福永は勢いよく立ち上がると、左手に鞄、右手に俺の手を掴んで歩き始めた。
夕暮れ色に染まった福永の笑みは、とても嬉しそうだった。
それに福永の手を通して伝わってくる温もりがいつもより暖かく感じたのは俺の気のせいではないと思う。
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