第12話 放課後のお出掛け 1
「久しぶりのお出掛け何処行く?」
放課後のチャイムがなると同時に上機嫌に鼻歌を歌い、そのまま俺の腕を掴んで校門まで一直線にやってきた福永。
下駄箱で腕が離れたが、これってさ普通恋人同士がすることだよなとか思っている俺は福永に一体何を求めているんだろうか。
こうゆう事をさ、当たり前にされちゃうとやっぱり心が揺れちゃうんだよな。
「湊は何処か行きたい所ある?」
「そうだな~」
俺は福永の隣を歩きながら考える。
「ちなみにさよは?」
「私は湊と一緒ならどこでも。あっ、でも二人きりでゆっくりできる所がいいな♪」
「ならさ、家の近くの川辺にでも行かないか?」
「川辺?」
「あそこなら知り合いが誰も来ないし、二人でゆっくりできると思うから」
「いいよ~。あそこなら甘えられるし」
「そんなに甘えたいのか?」
「うん!」
それからやって来たのは川辺川合流付近の球磨川本流によく似た近所の川辺だ。
ここは福永と小さい頃よく二人で遊んだ場所で、俺と福永にとって想い出の場所でもある。だから久しぶりに二人でゆっくりするにはある意味最適な場所。
俺と福永は小石が散りばめられた場所で尻を付け二人並んで座った。
「ふぅ~今日も一日疲れたね~」
鞄をおいて大きく背伸びをする福永。
その時、俺の視線がある物を捉えた。
それは制服越しでもはっきりとわかるぐらいに大きく、福永が背伸びをしたことでさらに大きさを強調してきた柔らかくて大きな胸。
「触ったらセクハラで訴えるから」
俺の視線に気付いた福永が声を低くして言う。
「……はい」
「ちなみに彼女にしてくれるなら触っても許すって言ったらどうする?」
くそー、そうくるのか。
ズルい、ズル過ぎる。
17歳男子高校生ならば女の子の身体に興味がある年頃のわけで興味がないとは言い難い。これは福永を性の対象としてみているからとか、いやらしい目で見ているかとでなく、人間が成長していくなかで遺伝子レベルで先祖から刻まれた人間として当たり前の生理現象である。決して、好きな子の胸を触りたいとかではない。本当に……そんなんじゃない。ただ本能がそれに興味があるだけで、俺は正常だ。
だからこそ俺の人間としての理性と本能が脳内で激しく暴れ始める。
一時の欲望の為に俺は福永を傷つけていいのかと。
なんとも理不尽な戦いを脳内で繰り広げていると。
「ってそんなに悩むんだ。あぁ~面白い」
「面白くない」
「こっちは面白いよ?」
「俺をおもちゃにするな」
「おもちゃになんかしてないよ。ただ意地悪してるだけだよ?」
「おい」
「嫌なの?」
「…………べつに嫌じゃないけどさ――」
「ならいいじゃん!」
福永が笑う。
どうやら顔に出ていたらしい。
俺はからかわれた事にため息をついた。
「ホントさ湊ってわかりやすいよね」
「う、うるさい……別にいいだろ。それに相手がさよならなおさら」
「どうゆう意味?」
「こんなことをさよに言っていいのかわからないけど、さよの前ではありのままの俺でいられるって言うか受け止めてくれるって言うか、そんな風に思えるんだ」
「なんだ、そうゆうことはもっと早く言ってよ。それってつまり私に心を開いている証拠だよね?」
「まぁな」
「だったらいいじゃん。私もほらこうやって湊の前では素でいるし」
そう言って身体を傾けて、くっつけてきた。
突然のことに福永の身体の重みでバランスを崩しそうになったが反対側の手を地面につけて身体を支えて倒れないようにする。
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