エピローグ End of the triangle relationship
第35話 告白の準備
そう言えばある作家がこんな事を言っていた。
――出会いは偶然であって必然ではない。
もしそうならこの世界で俺とあの子が巡り会えたのは偶然なのだろう。
そんな凄い確率の偶然に俺は心の中で感謝した。
ある作家の名前は白雪七海。
江口と同じく女子高生作家である。
そんな彼女の代表作は『失恋は甘い恋の始まり』で内容は義理の妹が……以下略。
と言うかさ、女子高生作家って高確率で高嶺の……美人で個性的な気がする。
だってあの『冴えない彼女の育てかた』に出てくる女子高生作家霞ヶ丘先生……ついでに紅坂先生も女子高生ではなかったけど超いい意味で癖強かったし。あくまで俺個人の意見で決して二人の作家さんを否定しているわけではない。だってファンだし……。ただ全員ハードル(攻略難易度)が高く個性的だと言う事だ。そんな高嶺の花クラスの人物が現実世界で二人も目の前にやってきた俺は武藤とある事をヒソヒソと人気のない渡り廊下で話していた。
「それで本当にやるのか?」
俺が告白すると決めた日は晴天で雲一つない日だった。その日は、青い空、輝く太陽、告白という人生の一大イベントを前に不安で暗くなりやすい俺の心をギンギンに照り付けて明るくしてくれる日でもあった。
「あぁ」
今日で俺の残りの高校生活が真っ暗になるか幸せオーラ全開のピンク色の楽園へとなるかが決まる。
それ故に失敗は許されない。
俺はこの五日間真剣に心の中の自分と向き合い続けた。
その結果として恋のペンデュラムがようやくある答えを導くと同時に止まった。
だからなのか今の俺に迷いはそこまでない。
あるのは緊張と失敗した時の僅かばかりの心配だけ。
「それにしてもまさか上条が××を選ぶとはな」
「まぁな。色々と考えた結果がこれだ。それに俺思ったんだ。初めての恋人は××との方が良いなって」
そう初めての恋人は本当に俺が好きな女の子がいい。
どんな時も初めての相手がこの人で良かったと思える、そんな恋人がいい。
だからこそ、今回だけ、自分の気持ちだけに素直になった。
二人との関係がどうだとか、二人の気持ちはどうなるとか、そんな難しい事はなしにして。上条湊と言う男が本当はどうしたいのか、それだけに焦点を当てた。するとなぜか今までずっと悩んでいたのが嘘みたいに晴れて心がスッキリとした。
「そっかぁ。一応言っておくが、俺はあくまで手伝うだけ。成功しても成功しなくてもそれは上条自身の行動の結果であって俺のおかげでも俺のせいでもないからな?」
武藤が念を押すようにして言ってきた。
「わかってるよ」
「ならいい」
俺が頷くと、武藤が俺の肩に手をおいて言う。
「大丈夫だ。上条が本気の本気で考えた結果がこれだ、と伝われば必ず成功する。なんたって相手も上条の事が好きだからな。でも気を付けろよ。まだもう一人の方を引きずっていると思われたら万に一つぐらいの可能性で失敗するかもしれない。だから自信をもって前だけを見て頑張れ!」
「あぁ、わかってる」
「まぁ、仮に失敗したら俺が笑い話しにして上手くフォローしてやるからよ!」
「あぁ、たすか――っておい! 笑い話しにされている時点で俺バカにされて心の傷抉られているよな!? そんな状態でフォローもクソもあるか! 俺の豆腐メンタルなめんなよ、てめぇ!」
「アハハ! まぁそんだけ反論する元気があるなら大丈夫だろ」
そう言って一人教室に戻っていく武藤。
俺はそんな武藤の背中を追いかけるようにして歩み始める。
「こうなった以上、後は天に身を任せるだけだな」
こうして俺の告白する一日(最終準備期間)が始まった。
※※※
告白は今日の放課後に行う予定だ。
後はどうやって本人に伝えるかだが、それは少々インチキ臭いが武藤と言う男に細かい事は全て任せて乗り切ることにした。だって俺が本人を下手に呼んで、もしかしてと勘づかれてそれがクラスで噂にでもなったら嫌だからだ。それに放課後約束した事で変に向こうが警戒してもそれはそれで困るのだ。あくまで自然体でその場の雰囲気に合わせて相手がリラックスした状態で俺の気持ちを素直に伝えたいのだ。でないと、どちらを選んでも実は心の中ではまだ悩んでいてとりあえず私からなのかなと思われても困るからだ。
教室に戻り、俺は視線を飛ばしてみる。
すると二人の鞄がそれぞれ机の横に掛けてあるものの、そこに二人はいなかった。
別に今すぐ二人に用事があるわけじゃない。
ただ気になっただけ。
それに放課後呼ぶのは一人だけだから。
「それはそれとして誕生日プレゼントいつ渡そう……」
俺は告白とは別に福永に対するプレゼントをいつ渡すかを考える。
一応学生カバンの中には二日前福永が野崎と昼休み話していたシルバーのアクセサリーが入っているのでいつでも渡そうと思えば渡せるのだ。
ただ当の本人がいないため、今は渡せないがな。
「まぁ、こっちは一日あれば渡すタイミングぐらいあるだろう」
俺は窓から見える大空を見ながら一人呟いた。
最悪下校の時でもいいしそれでもダメなら夜福永の家に渡しに行けばいい。なんたって徒歩一分もかからない家の近さなんだから。
それにしても誕生日プレゼント喜んでくれるかな。
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