第28話 幼馴染の特権は強力な武器 前半
あれからお風呂に入り一人ベッドの上でゴロゴロしながら漫画を読んでいると電話がかかってきた。
「もしもし」
『あっ、湊。今から十分ぐらい暇だったりする?』
夜なのにとても元気がいい声がスピーカーから聞こえてくる。
「二十分後ぐらいに武藤が何か用事があるみたいで電話掛けてくるからそれまでなら」
『なら今から湊の家に行くから待っててー』
そう言い残して電話が一方的に切られたかと思いきや玄関が開く音が聞こえる。それからすぐに階段を駆け上がってくる音も聞こえてきた。
「そう言えば考え事してたせいで、玄関の鍵閉め忘れてた……」
やっちまったなーと思っていると、電話が切れて僅か一、二分という短い時間で先ほど電話を掛けてきた福永が勢いよく部屋の扉を開けて、そのままベッドでゴロゴロしていた俺の元へとやってきた。
「えへへ~。来ちゃった」
そのままベッドの隅へと俺を追いやり、自分の陣地を確保した福永が寝転んでくる。
まぁなんだ。
人がシリアスな事を考えてその気分転換にゴロゴロしていたわけだが、目の前にやって来てはベッドに横になり、可愛らしい笑みを向けてくれる福永を見て一人真剣に考えていたのがバカらしくなってきたってことだ。
もしかしたら一人になったことで逆に考えすぎていたのかもしれない。
「それで、どうしたんだ?」
「甘えたくなったから来た。それに今日私より江口さんに気を遣ってあまり私に構ってくれなかったからかな~」
福永は可愛らしく俺の目を覗き込んできた。
「それに今一人でまた変に悩んでいるんだろうなと思うと心配だったからかな」
相変わらずよく俺の事を理解している。
「ま、私は私で自分の欲望以上に湊の事も心配だったわけ。それで悩んでたでしょ?」
「まぁ……」
「やっぱり。湊ってさ、こうゆう時自分じゃなくて相手の気持ちを優先しちゃう癖いい加減直した方がいいと思うよ。それってさ、湊の優しさなんだろうけど、実は私や江口さんにとても失礼なんだよ」
「えっ!?」
「だって考えてよ。私も江口さんも同情で付き合いたいと思ってると思う? 違うよ。私も江口さんも真剣だからあそこまでしたんだよ」
「なるほど……」
「そうゆうわけで私お風呂に入りながら考えたの」
「なにを?」
「正面から戦うにはかなり分が悪いって。だから卑怯かもしれない、それでも私は全力で湊にアプローチするって。それも嫌な私も全部見せて、ありのままの姿でね」
「おぉ、なるほど」
俺はどんだけ真っ直ぐなやつなんだと正直思ってしまった。
俺の事をこれだけ理解してくれている。
だけどそれだけじゃない。
俺の気持ちも考えて、俺がビビッて奥手になっているありのままの今を受け入れてくれて、今の自分の気持ちに福永自身は全力で向き合って、その道の先に何があり、この先どうなるか分からないのにも関わらず前だけを見て進もうとしている。
今後の関係は未来の自分に任せて、今出来る事を全力でと言わんばかりの前向きな姿勢に俺は心を打たれてしまった。
「だからこうするの」
もぞもぞと身体を動かす福永。
「おぉーいぃいい!?」
突然のことに変な声が出てしまった。
「今日江口さんの胸柔らかそうだなーってエッチな目で見てたよね。私の胸の方が弾力あって気持ちいいと思うんだけどどうかなーみ・な・と」
「さよ……」
福永が身体を寄せてきたことで福永のメロンのように大きくてマシュマロのように柔らかい胸が俺の身体に触れる。そしてそれを意識させるように身体を少しだけ動かしてくる。耳元で囁く甘い言葉と吐息に俺の脳が溶けていく。
くっそ……わざとだ。
だけど可愛い……というか、男子高校生相手にそれは反則だろう!
それから俺の首元に手を回して逃げれないようにしてきた。
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