第17話 リードさせないわ、夜の電話 2
「小説の参考資料として男性の恋愛価値観を知りたいの。今まで私の想像で色々と書いていたんだけどせっかく男性のお友達ができたから色々聞きたいなって思うんだけどどうかしら?」
「べつにいいけど、俺なんかでいいのか」
「えぇ、上条君がいいの」
「へへっ、なんかそう言われると照れくさいけど、俺なんかで良ければ協力するよ」
「ありがとう」
「なら先に約束して欲しいのだけれど、嘘はダメよ。嘘含むとそのキャラクターの崩壊なんてことにもなりかねないから」
「わ、わかった」
俺は緊張しながら頷いた。
少しぐらいなら見栄を張ってもいいかなと思っていたがそれはダメらしい。まぁ考えて見れば当然と言えば当然だが俺だって男だ。好きな子の前ではちょっとぐらい自分を良く見せたいと思う事もある。
「なら質問その一。好きな子のタイプは?」
「えーっと……」
俺は第一発目からそれかとつい心の中で思ってしまった。いや薄々はわかってたよ。だってペンネーム木菊一華(もくいちか)が作る作品は恋愛小説なのだから。必然的にその路線系統の質問がくるのかなとは話しを振られた時点で気付いていたけどさ……好きな人にそれを暴露すると考えたらもう色々とアウトだろ、これ。だってさ、遠まわしにやっぱり好きですって……あぁぁぁぁぁ告白しているみたいなもんじゃねぇかぁ……俺。だが今さら退路があるかと言えばあるわけがない。そう思い腹をくくる。そうだこれは考え方によってはチャンスなんだ。
「優しくしてくれる人かな」
「なら質問その二。積極的な子と消極的な子どっちが好き?」
「積極的な子」
「なら質問その三。どうゆう時に異性に心が惹かれるのかしら?」
「二人きりの時に手を繋がれたり甘えられたりしたらかな」
「なら質問その四。好きな子にみせる仕草は?」
「無意識に優しくしてその人の事を受け入れてしまいます。後はたまに甘えたいな……とか思ったり……します」
俺は何を言っているんだ。
てか恥ずかしすぎて、明日から江口とどう顔を接していいかがわからない。
「そう、ありがとう。なんとなく上条くんの恋愛の価値観がわかった気がするわ。ならまたね」
ふぅーやっと俺の辱める質問タイムが終わった。
「あー、ちょっと待って!」
俺は慌てて止めた。
幾ら友達だからって自分の弱みだけを見せるのは恥ずかしいので。
「ちなみに江口はどうなんだよ? 俺だけ答えるのはズルいと思うぞ」
「そ、それは……」
「友達なら教えてくれてもいいと思うが?」
「上条くんって意地悪なのね」
「なんとでも言え」
「いじわる」
あれ? 俺今普通に江口と話せてる。
まぁ自分から心を開けば親近感も湧くこともあるだろう。それに江口の初々しい声を聞いていると、なんとなく俺に心を開いてくれているのかなってそう思えるのかもしれない。
「好きなタイプは私の気持ちを一番に考えてくれる人で積極的な人。後は優しくされたらドキッとしてしまうわ。それから好きな人だけに見せる仕草は……ありのままの私を見せることかしら」
「なるほど」
「ならまた明日学校でね」
「おう」
「おやすみなさい、上条君」
「おやすみ、江口」
最後に。
「これからもっと仲良くなりましょうね」
言葉を言い終わると同時に江口は電話を切った。
そして江口は最後の最後で俺との距離を一気に詰めてきた。
……そんな風に感じた。
照れているのか、俺をからかっているのか、それとも俺をその気にさせて楽しんでいるのか、……やっぱり顔が見えないから何とも言えない。
それでも電話をする前とした後では心の距離感は全然違った。
だから、向こうも今頃、そう感じてくれているといいなと思った。お近づきになれたって。
あれ今度は江口の事を考えてないか。
まぁいいや。
今はすぐに出ない答えもこの世にはある。
だけどいつか必ずこの想いに決着を付ける。どちらかを選べと言われても今は選べないということがわかった。
それにしても江口ズルいよな。
今さらだけど福永って甘えん坊さんで積極的だなーと思って俺の心が江口から少し離れたタイミングを狙ってたかのようにもっと仲良くなろうとか言ってきて俺の心が離れていかないように引き留めるんだもん。多分偶然なんだろうけど、そんな事を言われたら諦めきれないというか。でもなんだろう。そのおかげで俺は後悔のない人生を最終的に選べるんじゃないかなって今は思えるんだよな。
なんだかんが言って、さっきよりは気持ちが軽くなったのは事実。
俺は心の中で江口に感謝した。
「気分転換に外の空気でも吸って寝るか」
俺はスマートフォンをポケットにいれて、立ち上がって小窓を開けに向かった。
窓を開けると涼しくもまだ肌寒い夜風が部屋の中に入ってきた。
それだけでなく、ちょっとだけ嬉しい事もあった。
「あっ、湊! 奇遇だね。湊も部屋の換気?」
「まぁな」
「ならこのままちょっとだけお話ししない?」
「わかった」
それから俺は福永とたわいもない話をしてから、身体が冷えてきた所でベッドに戻り深い眠りについた。
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