各々の世界で

「それで、どうだった。体験の方は。」

「うーん。結論から言うと、やはり私には向いてなさそう。」

「そう。深刻な顔をしているけど、嫌な思いをしたの?」

「うん、間接的にね。」

「ああいう雰囲気は、慣れていないとキツそうね。」

「・・・そこには知らない母がいたの。いや、知らないが。」

「うわぁ、それは・・・。」

「そういう世界にいるのだ、と思ったわ。突然この現実からつままれて、現実こことそっくりに扮した未知の領域に配置されたような、そんな感覚。」

「さぞかし居心地が悪かったでしょうね。可哀想に。」

「えぇ。温い、男と女の運命を明白にしてくるの、生々しく。あくまでプロトタイプのはずなのに、それが全てだと洗脳されそうで。」

「何よりも、母親の知らない一面を見てしまったわけでしょう。」

「ええ。覚悟はしていたつもりなのだけれど。」

「仕方がないことよ。まるで違う世界がそこら中に存在するのだから、貴女は貴女の世界で生きればいい。」

「ありがとう、そうするわ。」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

わたしたちの語log 高橋優美 @yukumi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ