『仮面』

「大丈夫?」

「何が、かな?」

「どうしてみんな、あなたが泣いているのに笑っているの?」

「ああ。これが僕の仕事なんだよ。」

「私には、あなたが可哀想よ。」

「君は優しい子だね。・・・うん、確かに、僕の仕事は昔から、人に仕事として知られている。笑わせるのとは違うんだ。分かるかい?」

「うん。それが悲しくて泣いているんでしょう。」

「この涙にはそういう意味が込められてるんじゃないかとも言われている。でもね、注目を浴びること、人気者になることが僕の存在意義だ。そのままの僕は愛されにくい、醜い見た目でね。正面から向き合ってくれないんだ、みんな。」

「そうなのね。なんだか、ごめんなさい。」

「いや、謝ることじゃないよ、大丈夫。だから僕は、相手がどう思っていたとしても、僕を認めてもらえるこの仕事が大好きだ。」

「そっか、なら良かった。じゃあ最後に聞いてもいい?」

「どうぞ。」

「今お話ししているあなたは、?」

「はは、思っていたより難しい質問だ。うん、それは君の想像に任せるとしようかな。」

「ずるいわ。」

「ごめんね。じゃあ、そろそろいったほうがいいんじゃあないかい?」

「そうね。お話ししてくれてありがとう、ばいばい。」

「ばいばい。・・・きっと、この姿でなければ、君も僕と向き合ってくれなかったろうな。」



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