『ひとり』
「そんなことあるものか。」
「あるんだよ、実際、君の目の前で起きていることなんだ、受け入れなよ。」
「俺は、俺だ。」
「君は私を否定するの?」
「・・・。」
「私たちは随分長い間あなたを見てきた。最近になって君の出番が減ってきたから、てっきり気付いているもんだと。」
「あいつを止められないのか。」
「私か貴方が出てこなければいけない。もっとも、その方法はわかりかねるけどね。」
「・・・俺は臆病だ。俺ら三人のうちで言えば、間違いなく俺のもののはずなんだ。なのに何故か、それに対して理由も形もない違和感があるんだ。俺が彼を押し退けて出ていったところで、これは俺のものではないという真実を突きつけられそうで、それがたまらなく恐ろしいんだ。」
「・・・真実をいうなら、彼のものでも私のものでもなく、間違いなく貴方のものだ。そして更に真実をいうなら、貴方は今、逃げている。口では彼を止めなくてはいけない、というけれど、本心は違うね。自分ではやりきれない苦しみを、行き場のない怒りを、彼に託しているの。加えると、その事実からも逃げている。」
「俺は・・・。」
「私はほとんど出番がないものだから、誰よりも貴方を見てきた。彼と貴方は二人のようで一人なの。信じてあげて、彼を・・・いや、貴方を。ああそう、ついでに私のこともね。」
終
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます