わたしたちの語log

『自分を殺す人』

「人が自分を殺すのって、どんな時だと思う？」

「それは自殺ってこと？」

「あぁ、いや、そうじゃなくてさ。こう・・・自我というのかな、自分の意思を持たなくなった時、といえば伝わるのかな。」

「はあぁ、理解したよ。うーん、そうだなぁ。

これは僕の偏見になってしまうのだけれど、自分に自信がない人ほど、主張しないと思うんだ。意見を交わす場・・・たとえ些細な日常会話であってもね、周りに流されておしまい。我慢して我慢して、そうやって少しずつ身を削っていく・・・そういう時じゃあないかな。答え方としては間違えているが、僕にはこうとしか答えられないよ。」

「なるほど。その答えからすると、君が思う『自分を殺す人』は、きっと幸せではないね。」

「もちろんだ。僕がもし、『自分を殺す人』であったなら、幸せです、とは言えないね。不幸せだと思うよ。」

「そうか。・・・では少し僕の話をしてもいいかい。」

「初めからその気だっただろう。」

「ふふ、バレたか。・・・そうだね。幼い頃からの経験で、自分を殺すのを得、と考えるようになったのではないかな。次第に、それが楽、とも。きっと過去に、自分の選択をひどく悔やむようなことがあったんだろう。また間違えてしまうのが怖いんだ。人間誰だって楽な道を歩きたいさ。逃げたくなる。

でもね、それは立派な選択なんだよ。逃げるのも、殺すのも。

君は自分を不幸せと言ったね。辛いこと、たくさんあったね。

ただ、忘れないで欲しいのは、君は今、生きているということ。

君が『自分を殺し』ながら『生きている』ことだよ。」

「君は一体・・・。」

「・・・僕は、君が作った君だ。」

終