第15話 戦場と黒龍
「な、なんだ、この状況は‥‥?」
アイテールから降り、戦場を目にしたルドラの最初の言葉はそれだった。
ルドラ達の予想では、魔国軍優勢ながら王国軍も持ち堪え、街までは侵入されていないだろうと考えていた。
だが、実際には戦争は休止されていて、両軍の間にはドラゴンが鎮座している。
戦闘を妨害して時間を稼ぎ、魔国に侵攻を断念させる。
ある意味で、ルドラの作戦通りともいえる状況であった。
詳しく周りを確認してみると、予想していたよりも被害は少なかった。
ドラゴンが現れたことで戦争の被害が減ったのはむしろ好都合といえる。
問題はあのドラゴンを倒さなければならなくなったことだ。
普通のドラゴンなら、ルドラたち以外にも倒せる人は少なくない。
しかし、あのドラゴンは明らかに格が違う。
魔人族の強者に被害が大きいのは、彼らがドラゴンを倒せる実力を持っていたせいだ。
あのドラゴンを普通のドラゴンと同じように攻撃し、返り討ちにあったのだろう。
「エルシア、どうだ?」
「シルヴィアは生きているわ。あのあたりにいるみたい」
エルシアは魔人族の軍の中心を指差して言った。
「でもグレヴィルの魔力は感じないわ。たぶん‥‥」
エルシアは口を濁したが、おそらくグレヴィルは亡くなったのだろう。
エルシアの前では口にしないが、ルドラにとってはこれも都合が良かった。
ほぼ確実にグレヴィルはルドラの計画の障害になったからだ。
グレヴィルに負ける心配はしていない。
心配なのはエルシアの前でグレヴィルを殺すことだ。
エルシアは魔人族の王として全ての民を大切にしていた。それは、エルシアを疎んでいたグレヴィルも同じだ。
ルドラがグレヴィルを殺しても理解はしてくれるだろうが、少しでも摩擦は避けておきたい。
「なら仕方ない。当初の予定通り俺とエルシアでシルヴィアの説得に行く。クレアとアリアであのドラゴンを倒してくれ」
「わかったわ。こっちは任せなさい!」
「私もルドラ様のご期待に応えられるよう頑張ります」
ルドラが周りを頼ることは珍しい。
彼女たちはもっと頼ってほしいと思っているが、これがルドラの性格なのでなおすことはできない。
そんな中、ルドラが自分から頼ってくれたのだ。これには張り切らずにはいられなかった。
「あぁ、頼んだ。エルシア、行くぞ」
「えぇ」
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