第13話 アイテール
アルテナの保有する飛空船『アイテール』はブランとルドラの2人がかりで半年以上の時間をかけて作り上げた大作だ。
ブランの神聖スキル『クリエイト』の力は、大まかに分けると物質の創造、融合、形成の3つがある。
特にその中でも『創造』は、この世界に存在しない物までも想像して作り出すことができるという、まさに神聖スキルと呼ぶにふさわしい能力だ。
欠点としては、創造には多少の制限があること、魔力を非常に多く必要とすることなどがある。
アイテールを作るにあたり、まずは材料から『創造』した。
機体に使われているのは透翠石という、普段は翡翠色だが、魔力を込めるほど透明になるという性質のこの世界にはない特殊な鉱石だ。
かなりの時間と労力をかけただけあって、アイテールの性能はかなり高い。
王都付近から国境まで馬でも一月はかかるところを、アイテールでは一週間かからない。
アイテールに乗っている間は外からの連絡も受けることができないので、ここでは作戦の確認と鍛錬につとめていた。
「ルドラさん、明日中には着きそうだよ」
「ありがとな。俺が代わるよ」
アイテールの操縦には魔力を緻密に操作する技術が必要であり、魔力の少ないクレア、魔力操作の苦手なアリアとマリナの3人には操縦できない。
なので、残りの4人で交代して操縦していた。
「アレンがいるおかげでだいぶ楽になるな」
「お役に立てたならよかったです!俺だけで操縦できたらよかったんだけど‥‥‥」
「ありがたいが無理はするなよ。アイテールの操縦は疲れるからな」
アイテールの操縦には、ただ魔力を流すだけではなく、方向を指定して動かす必要があるので、かなり疲れる。
目的地へ一直線に進むだけでなく、高度を保ったり、なるべく町の上を通らないようにしたりと神経を使う場面が多いからだ。
「じゃあ、ルドラさん後はお願いします」
「あぁ、しっかり休め」
アレンが部屋を出た後、神聖スキル『代行者』によってアレンから代行した『マリオネット』の力によってアイテールの操縦を始める。
そして、安定してきたら魔導書を取り出して読み始めた。
実は、ルドラは魔法が苦手だ。
基本的な魔法は使えるが、殲滅力のある魔法がほとんど使えないのだ。
そのため、一対一では『アルテナ』の中でも桁外れの強さを誇るルドラだが、対集団の殲滅力ではアリアやエルシアを頼らざるを得ないのが現状である。
今はそれでもいいが、クロノスとの決戦時に敵がどれだけ多いかわからない。
クロノスが率いる眷属もだが、この世界にもクロノスの信者が敵になる可能性はある。
アリアやエルシアだけで対処できるとは限らないので、ルドラも魔法を覚える努力をしようと思ったのだ。
その成果もあって先の勇者との戦いの時には、初級だが水魔法を実戦で使うこともできた。
クロノスがこの世界に侵攻するまで残り1年もない。
少しの時間も無駄にはできなかった。
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