第12話 王国と魔国
魔国の戦争準備は驚くほど早く進んでいった。
グレヴィルが魔国会議で戦争を提案すると、即座に全会一致で承認されたのだ。
シルヴィアのことだからグレヴィルの野望に気付いていないはずがないが、それ以上に人間族への恨みが勝ったのだろう。
会議の後はグレヴィルが民衆への演説を行い、文官が武具や兵糧を用意をし、武官は戦術の確認や兵士の鼓舞などを行う。
全ての用意が整ったのは1週間後だった。
そして、魔国が戦争の準備をしていることは王国にも伝わっていた。
「魔国が戦争準備を始めている!だが、魔王を亡くした魔国など恐るに足らん!」
王国国境防衛軍指揮官ルベルトが軍隊を前に大声で演説をする。
兵士はルベルトの演説を受けて緊張していた心が奮い立てられるのを感じていた。
「我らの仕事は勇者様が来るまで魔国軍を押しとどめることだ!王国軍の名にかけて守りきるぞ!」
「「「おぉおおおぉぉぉ!!!!」」」
「以上が魔国と王国の現状になります」
「ご苦労だった。しばらく休んでくれ」
諜報員が退室した後、ルドラは作戦の説明を始める。
「魔国としては、勇者が来る前に国境付近の都市を制圧して、万全の態勢で勇者を迎え討ちたいはずだ。王国軍もそれが分かってるから守りに徹するだろう。そして、戦況が膠着した頃にアリアの魔法で戦闘を中止させ、魔国軍の指揮官を説得して戦争を中止させる」
「説得できそうなの?」
「魔国の侵攻の大義をなくそうと思ってる」
「大義を?それってどういう‥‥?」
「エルシアが生きてることを伝える。そして動揺してるうちに押し切るつもりだ。勇者が来る前に都市を制圧できなかった時点で魔国の侵攻は失敗したようなものだ。士気も下がってるだろうから撤退に不満も出ないだろう」
それからしばらく会議をした後、飛空船『アイテール』で戦場への移動を始めた。
ルドラが懸念しているのはグレヴィルの存在だ。
シルヴィアは冷静な判断ができるようだから、エルシアが生きていると分かれば戦争を続ける理由はないとわかるだろう。
だが、グレヴィルはどう出るかわからない。
場合によっては自らの手で殺す、とルドラは覚悟を決めていた。
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