第7話 後始末
「アルテナの説得に成功し、今後は共に平和を守るために協力し合うことを約束した」
勇者がアルテナを潰すという宣言の翌日、勇者の声で全世界に発表された。
その発表に疑問を持つ者はほとんどおらず、あのアルテナを改心させた勇者への称賛で溢れかえった。
‥‥‥
‥‥
‥
「これでいいかしら?」
「ルドラさん、終わりました!」
エルシアとアレンが頼んでおいた仕事を終えて少し疲れた様子を見せる。
エルシアの精神干渉にアレンの操作の力を合わせることで、意識のない状態の勇者を操って先の声明を出させたのだ。
「あぁ、よくやってくれた。これで当分、うまくやれば決戦の時までもたせられる」
「ねぇルドラ、勇者なんかと協力してなんになるの?」
「マリナもわかんなーい」
アリアとマリナが疑問を口にする。
クレアとエルシアは分かっているみたいだが特に口を挟まない。
「勇者と協力するメリットは大してないぞ?強いて言えば、勇者の価値を上げること、かな?勇者が俺らを潰すって宣言したから、いい感じの落とし所を作ったって感じだ」
ルドラの説明にエルシアは頷いているが、アリアはまだ完全に分かっていないようで首を傾げていた。
「勇者の価値を上げることに意味はあるの?」
「勇者を平和の象徴のような存在にして、少しでも戦争とかを減らせたらいいなぁって感じだな。そもそも、あそこで勇者を殺したりなんかしたら、それこそ世界中を敵に回すことになりかねないし」
「確かに殺すのはやめた方がよさそうね」
ルドラの説明にアリアもようやく納得した表情を浮かべる。
「クロノスの目的はこの世界の人々を争わせて制圧しやすくすることだ。それを防ぐために勇者には生きていてもらわなければならない。もし、俺がクロノスの立場なら、勇者を暗殺させて戦争の引き金にするからな」
ブランの方に視線を遣ると、それに気づいたブランが返事をする。
「これが勇者の聖剣。確認してみて」
そう言い、勇者の持っていた聖剣をルドラに渡す。
先ほど勇者が持っていた時と比べて、僅かにだが強い雰囲気を感じる。
「耐久性と鋭さくらいしか強化してないよ。あんまり弄りすぎると気付かれるかなーって思って」
「それでいい。これはあくまで、アルテナでは勇者の護衛に不足した場合の保険だ」
「ならよかった」
ブランが安心した様子でほっと息をつく。
ルドラはみんなの表情を確認してから続ける。
「これからの方針を発表する。まず、勇者が殺されないように監視、護衛をアルテナで行う。それに関してはすでに人を回してある。では、俺たちは戦場に向かうぞ」
諜報員からの報告で、魔国が戦争の準備をしていることとが伝えられている。
王であるエルシアが殺されたのだから仕方ないのかもしれない。
だが、エルシアが生きていて実際ここにいる以上、無駄な面倒事だと思わずにはいられなかった。
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