第十四話 待つ時間

「僕は出るけど、グスタフは後から来ることになったよ?」


講習の進捗的にそうなったらしい。思ったより出掛ける時期は早まったけど、セリのやる事は少ない。


持っていく服を選び、必要そうなものを相談する。

「シュルトが忙しそう」

「商売繁盛で良いんでない?」


カナンも側に居た。


セリは読書をロードの上でしたり、椅子に座ったり。窓際でふと視線を上げれば、城内の景色が見えた。


(ここも見納め)


感慨深い。医療棟への散歩をして鈍った体を慣らしてもいる。外の寒さが緩んできたものの、部屋が暖かいのでちょっと出たくなくなる。


「贅沢だなあ」

「ん?何が。」


カナンが、セリの独り言を拾った。


「環境と装備。」

「そう?セリちゃんの元々の物がしょぼかったと思うけど。」


何も言えなくなった。お古の兵士の装備に、あり合わせ、縫ってサイズを合わせる。何の付与もなし。


「魔道具もないし、食糧もカツカツ。あれで良く外に出たよね〜」


カナンは、セリがここに来た当時の装備を再点検していた。どこから来たかわかる物を持っていないか?という視点で。


大人だったら、危険な諜報員じゃないか調べるところだけど。完全の迷子を救出した扱いだったらしい。


「私、捕虜になってると思ったのに」


その頃も懐かしいくらいに濃い時間を過ごした。

「部屋に篭ってるだけだった事ない?」


決まった部屋への移動。護衛付きで言葉を交わす人も決まっていた。

「動いてるつもりなんだけどね。」


その時に交流に発展もないのは、獣人の文化に馴染まなかっただけじゃない。


人族、イメージ悪いらしい。


接している場所。けど森があるから戦争とはならない。この地域、環境も過酷だけど魔物もなかなか厄介らしい。


巣に当たったりするからかな?魔物も人も、過ごせる環境が限定的なのも原因だ。


寒さも食べ物がなくなっていくのも、備えや手段があるから慣れだと思っている。


「ここは、凄いとこだなあ。」


食糧に、寒さと魔物から守る壁が立つ。その中は暖かく、娯楽もあった。

こんな冬籠りを考えもしなかったけど、暖かい季節が楽しみなのは変わらない。


「セリ!」


ロードが帰ってきた。珍しく会議に出席して、機嫌も悪いらしい。

「お帰りロード。」


迎えて、ちょっと落ち着いてもらえば、話してくれるだろう。

さて、何があったのかな。厄介ごとってほどの事はあるかな?


正直、逃げるのも手だなと聞く前からセリが思っているのは、どういった変化なのだろう。


「周りの大人に悪い影響、与えられてない?」


セリは、わからず首を傾げた。


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