議長録②

竜人の性格


戦闘力はあるものの周囲には無頓着、交流をしないのは予想通りだった。

その魔力と力で畏怖する者、敬意を抱く者も居た。


力を尊ぶ獣人ならでは、犬獣人が多い特徴も出ているのだろう。衝突らしいものはなかった。


それに、良い誤算もあった。今回、シュルトという人族の商人とは、会話をする仲らしい。冒険者として雇い、一緒に居たこともあるとかで交渉にうってつけだった。


客人の扱いでもある。


脅威としての備えも必要だった。番を得たとは聞いていないが、番が関わると人が変わると言われる種族だ。その表現も生易しい。


番に関わると街を滅ぼしかねないとは、嘘ではない。


もう1人、番が関わると囲い込むと言われる、特別獣性が強いのが狼だ。この城に来ている獣人の中で浮いている男だ。情報部に所属、特に目立つ動きはしていないが、犬獣人の多い中で狼は異端扱いされがちだ。


私ではわからない感覚なので、気にしているだけの現状だった。


竜人の対抗戦力が必要とあれば、声がかかる人材だ。

私もそのひとつに数えられているものの、この城全体の守りに魔力を使っている。


そのために、急遽人が送られてきた。


実際に、転移魔法によって来たのだ。王家の血筋にありそのフットワークの軽さから、冒険者として動く事もあるという。魔力に疑いはないが、まさかの大物に浮き足立つ騎士が多かった。


当たり前か、気に入られれば王家に仕える事も夢ではない。それをする男ではないとは知らないからな。


その準備に、右往左往するのを見ながら増えた書類を決済していった。


始まってしまえば、それほど問題にもならなかった。


要望に応え、会議に出席するなど例年通りの仕事だった。研究者をの報告に風の観測結果を交えての意見交換。


薬学の方にもさんかしたりと、概ねの内容は変わらなかった。



このまま、静かに極寒の時期を乗り越えられればと願ったが。

それは流石に、日和見が過ぎた。


大きな変化があったのは、強い魔物の発見例から起こった。


竜人の力を借り、魔物の討伐を果たした男が1人で帰還する。その腕には子供。


竜人の番が見つかった。



騒乱の予感しかしなかったが、キースという男は楽しそうに笑った。


「おもしろそうだね?」

「笑い事ではない。番を害した相手を竜人が許すわけがない。」


「そうだね。僕の出番?」

「そうならないよう手配する。見つかった子の様子を見にいかなければ。」



「無理だと思うよ。だって、自分が会えてないのに他の存在を番に会わせるかな?」


一理ある。


医師からの報告を聞くとともに保護する方向でを進めた。

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