議長録③
竜人ロードが番を連れ帰った事実は、伏せられた。今王都では番への印象が悪くなっている。ある事件の影響だが、それは割愛する。
獣人の番に対する衝動は、凄まじいものがあると聞く。最近の傾向ではその執着を隠し嫌厭する傾向があるらしい。
エルフにも番の話はあるが、物語上のものだ。長年も森の中を出ないで生きる種族故だろうか。
当の本人、ロードは興奮状態と落ち着きのなく部屋にいる。その相手を
シュルトにしてもらい抑えてもらう。“番の身体に障るから”と、説得に応じているが回復するまでは待ってもらおう。
まだ目覚めない少女は心配だが、迎える準備はできていた。
竜人の番であると周知させれば、抑制できる。
街を滅ぼすほどの力を持つ竜人に手を出したも当然だ。
番を害した者を許しはしない。
しかし、その愚か者が出た。内内に、処理した。
そのため、急遽の対策会議を開いていたところロードの暴走の一報が来る。よくよく話を聞くと、番への面会を妨害されたためと言う。
「なぜだ?私は許可を出していたが。」
幼いとはいえ、本人の様子を見ながら交流をはかるのがよいとおもうのだが。
「兵士の中に、番に反目する一派が邪魔したそうだ。この件に医者も関わっている。」
「根が深そうだな。」
少女、セリを保護しているつもりが危険な目に合わせてしまった。
ロードとの面会も、氷柱生えた中庭で穏やかならざるものになったと言うし。
豪胆な性格なようで、飄々としていたのが印象的だが。怪我で体力がないのだろう。
即急に、ロードの下へ匿われた。
手を出す事は禁止して、保護者役と見張りを付けた。
それで環境は良いが…
「なぜ、セリに尾行がついている?」
「まだ隣国の密偵という疑いが晴れたわけではありません。」
「では、もう必要ないな?見張り役は情報部の者だ。」
これで、これ以上付けられない。
セリを見張りたい気持ちより、竜人の番として利用できないかと思惑が透けて見える。
今後は、周りに寄ってくる者を避けられる。更に守りをかたくするには
後見役を私がつとめる事か。
子供は好きだが、好かれた経験は皆無だな。
物怖じしない子のようだ、上手く交流できると良いが。
その前に、兵士の引き締めをしなければな。
騎士団長との打ち合わせ、それぞれの部隊への通告の手配をした。
「あの子って、おもしろそうだよね?色々秘密もありそうだし。」
“キースほどではないだろう”という言葉を飲み込み、セリに関する鑑定結果を見た。
「魔力量もあるが、運命神の加護か。」
どんな道を歩む事になるのか、気がかりだった。
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