25-運命神の導き


大きな獲物の前に座るグスタフ。何かを飲みながら、待っていたようだ。


「おお、大物だなあ。」

カナンが加わって、今いる3人でなんとか持てるか?とセリは考える。セリは人数に入らない。運ぶより、捌くのが良いか?


しかし、獲物から意識は外れた。


「何かありそうだ。」


グスタフの目が向く先は、森。

看板、階段などもない。雪の残る上り坂。


セリには危険だとは思わなかったが、違和感は感じた。魔力関係のものだろも分かる。

「肌に訴えてくるような、魔力のふぉふぉ感がある。」

「フオフオ感?」


セリの表現に、カナンがツッコム。そのやり取りを置いといて、ロードは進むつもりのようだ。

「行ってみるか。」

「キースとシュルトを呼ぶか?」


静止するでもなく、グスタフかた提案があった。2人を呼ぶのは、進む先への警戒からではなく。


“ここで声を掛けないと後から文句が長い。”という予想からだった。そして呼びに行くのは1人で十分。


「オレぇ?」

「行ってこい。」


獲物の見張り、セリのお守り。

狩りで走っていないのでカナンの番。


獣人が嫌がられるかも?フード被れば大丈夫だろうと会話が続き、待機が決まった。


「お茶の準備してる。」

セリも慣れて来た。


「で、ここ。」


早々にキースとシュルトを連れて来ていたカナン。

意外と近い?


「お茶も飲むけど。気になるね、ここ?」



「普通に範囲に入れば見えるんじゃない?」


「入って良いものか。」


「ああ。許可有ればってどの程度かって事?」


精霊の力で隠されている。

魔物除け、認識阻害、認めた者以外は到達できない。


許可された者と一緒なら


該当するのはセリ。ロードと一緒に手を繋がれて、入った。


「あ。見た覚えがある。」


4人も連れて、上へ上がっていく。丸い木材のまま、階段にしている坂。


もう少し。



足が速まってもロードは楽々着いて来る。そしてその先に広がる、場所。


「このまま左に行くと、泉の洞窟。もう少し歩いていけば教会がある!」


少し息が上がったセリが指差す。

育った場所だ。狩りから帰る道は馴染んでいる。


下では気づかなかったけど。


待ち望んでいた、帰る場所の風景があった。


「ただいま!」


お手伝いに出ていた子に声をかけると、3人集まって来た。


「どこ行ってたんだよー!」

「怪我ない?」

「おっちゃん、誰?」



色々聞かれたが、報告が先とシスターか神父様に伝えるよう言った。


「セリ姉ちゃんがお婿さん連れてきたー!」

そう言う子へ“待って”の手を伸ばすが、そのまま宙に漂う手は、否定する形にはならなかった。

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