37-急報

セリへの嫌味、つまり攻撃。


そう思ったのは、そこにいたロードも一緒だった。フオっと冷気が舞ったが、カナンによってなんとか衝突は免れた。


「お疲れ。」

ぐったりしたカナンを、セリが上から撫でる。

ロードがあの兵士に手を出す前に、セリは抱っこで防いだ。


別に兵士が戦闘不能になるのは構わないんだけど、今大変そうな状況で荷物が増えるのは避けたほうがいいよね?という配慮だ。


主に、キースとシュルトに向けている。荷物が増えて嬉しい状況ではないだろう。


ロードを宥めている理由には、早くグスタフが何を調合しているか見たかったとも言う。



そしてセリは、調合に使う素材を洗って手伝いを始めた。

水魔法に魔力を含んでいる事で、質を害わずに済むらしい。

逆に質が落ちてしまう物もあると教えてもらった。既に分類されている。


邪魔になるなら縁っこで見ていようかと思ったが、グスタフは説明しながらも手元は流れるように動いていた。


魔力水を求められ、両手で包み込めそうな水球を出す。

宙に浮かせ、その下には器。


じっくり流れに逆らわないように、丁寧に魔力を入れた水球は、

上から下に、器へすっぽり落ちた。


その質をグスタフがチェックして、合格をもらいセリはじっくりと

その調合を見学できたのだった。


ロードも氷を出したりと、順調に薬液が作られていった。いつのまにか、夕食に作るスープほど出来上がったのに驚きだった。


調合された薬を見ていた。

【除去剤】


植物の魔物に使う事もある

「つんとする臭い」



【エアウォッシュ】


臭いが飛び散り、鼻が生き返った。

水魔法と風魔法の同時使用は、魔力消費が少なく簡単に使っているように見えるが、調整が難しい魔法だ。


「ありがと〜セリちゃん!」


獣人にはツライ臭いだったらしい。

ロードも鼻が良いと思ったが、魔力で防ぐことができるている。器用だなあ。詳しく聞くと、身体強化の応用でできる者もいるが、消費が激しいと。


そこまで聞いて、同じ魔法をかけておいた。感じなくても、臭うものは臭うって事だ。


そんな和やかさとは別に、反意を持つ兵士達。


“撤退に反意を”

“戦うべき”


そう口にする兵士に、『我々は極北の城を守ることにある』と騎士が言い聞かせて抑えていた。


その夜事態が急激に動く。

慌ただしく到着したのは、『極北の城』からだった。ドワーフの職人達も一緒に、かなり強行に進んできたようで披露している。


魔物除けの残り香があった。


そして、キースへの返信を携えていた。緊急と言付けられ、早速手渡された。

『北北西に魔力の発生。』


議長、アクレイオスだからの報せだ。エルフは魔力に長けて、風をよむ。

何年もあの城で風を読んでいた男からの異常発生の通告。


「まずいかなあ?」


魔木があると思われる結果、放出した魔力によって魔物の狂乱した。その上観測できるほどの魔力を放出している。


花が開くかのような、広がりを見せる

狂乱の宴と詩人が唄い伝える


その評された魔物達の血と残骸が残されるだけ。血生臭いが、その恐怖を伝える歌のひとつ。


「ーだ。」

キースが何か言ったが、獣人の騎士には意味はわからなかった。ただ、

今後に襲来は、中規模の魔物の群れでは済まないだろうと言う事を察する。


「出る準備を早急に整える。ドワーフのリーダーを呼んで。」


自分が離れるためには、整えておかなければ。


指示を出し、確認と指令を出し

早くて2日後には動きたいと焦りを見せず、動き出した。



「それと同時に、海への通路を確保しておきたいね?」


この地域一帯に広がった場合、海からの上陸が可能だろうか。

今後を見越した調査に、ドワーフの護衛を割り振った。


そして、ひとつの作戦を実行すると宣告する。


魔法を使えると言う点で選んだ。

魔木の封印は、薬液と魔法によって行う。


離脱に転移魔法を使うため人数限られる。


「では迅速に動いてくれ。」

セリが参加すると伝えなかったのは、意図してだった。

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