38-砦の整備
ドワーフの技術者が入ったことで、調査が格段と進んだ。
『効率、整理整頓。』
の文字が掲げられた作業場には“遊び心”の部分で不明な点も見られたが、トロッコの事もわかった。海側と言っている所にしまってあるらしい。
「あっちに泊まろうかの。」
洞窟での泊まりがけの作業も、慣れた物なのだろう。気負いはなさそうだ。
「魔物の心配は?」
「多めにつけて、返すってのでどーだい?」
護衛を連れて行き、魔物の調査と殲滅。
物資の支援から、数人を残して後は『極北の城』へ帰らせて行く。
ここに居ても守りは難しく、その意味もない。退避する道の候補として調査は入るが、守るならば城壁のある場所のが良い。
あそこには守るべき民がいる
物資も食料も、兵力だって温存されているのだから。規模から行って、災禍が訪れる可能性も出てきたのだ。準備は怠れない。
それ故、急報が入ったのだから。『極北の城』でも厳戒体制が敷かれている事だろう。
その流れとは別に、セリはロードと兵士達が動く様を見ていた。
周囲のテントは撤退に移っている。最後には建物が残るのみになる予定だ。
中心部に置かれたこの建物が潰れた状態は、大きな魔法陣のようになる。建つ前の状況と似ているだろうが、膨らんでいた物が潰れた様は、なにか物悲しい。
設置したまま、また魔力を注ぎ込めば建て直せるようされると言う。北の砦拠点という名前はそのまま。当初の雪原の戻っていく。
兵士達は2人を景色のように扱う。採取、それぞれ魔物を狩っての帰還命令が出ているため構っている暇などない。だが…
「あの子供?」
「まだ帰っていないのか。」
民を守るのが使命である。ただ、異質などこの所属かもわからない子供を重用するのに疑問を抱かずにはいられない。
『軽んじている』
『騎士と兵士を使わず、外部の者を使って』
不満を感じない訳はない。
キースもそれに気づいていた。獣人の気質、それが血筋や地位では押さえつけられない。だが、判断は迷わない。
最良の選択をする。
最適なメンバーで望むべきだ。
「手遅れになる前にね?」
思惑は絡まないまま、指令された通りに動いていた。
ドワーフの技術者はそんな考えなどより、過去役目を終えた坑道に興味津々だった。
「この技術、100年は前かの」
「魔物は居ませんね。」
「魔物除が効いとるか」
「土鼠くらいおるんじゃないか?」
簡易なトロッコの整備をゆるりと動かす。
線路の歪み、欠けを見ながら。時たま止まって進んだ。
“海側まで辿り着きたい。”
そこでなら休憩室、新たな仕様書など見つかるかもしれない。
安全の確保も用意だろう。そう、作っている確信している。
「何たってドワーフの仕事じゃからな!」
護衛に囲まれながらも気にもせず、仕事を進めた。
「開通したわい」
線路の破損がほぼない
真っ直ぐな道を阻むものもなく
洞窟の広がりの奥には、海のかおりだ。
トロッコが並ぶだけに見える殺風景な風景。見かけは。
通信の魔導具で拠点との連絡を取る護衛
『海に到達』
『了解、探索せよ』
すぐの帰還は出ない。緊急の何かは起こっていないようだ。この調査に集中できる。
「船、魔導具の積まれたそれは効率もよく、騎士でも動かせる魔力効率じゃな」
人数が少ない。海に出るのには装備が心許ないが。
「いざと慣れば獣人の国の方へ流れればたどり着く。」
整備調整にかかる。
「川を登ってどこまで行けるか。」
「その地図なんか残っとらんか?」
保護魔法がかかった、戸棚を護衛も加わり漁る。
雨も海の水に沈んだとしても大丈夫なように作ったそれ。突っ込んであるが、これくらいなら整理されている方だ。
ペラペラと人数を動員し読み込みたい気持ちを抑えて、関連書類の洗い出しに精を出した。
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