31-報告

遅めの夕食にした。


キースと一緒の食事で、開けた穴を開けた話と地下の居住部分の報告だ。


「じゃあ先に行けそう?」

「線路があったが、他の仕掛けもあるかもしれん。」


トロッコがあれば、物も人も送れるかもしれない。その先への調査は居住部分の調査で、資料が得られないかで決めると話し合われていた。


もし山の向こうの海まで続くようなら、相当な距離歩いていくのか?という問題になるからだ。グスタフは、『線路が使われていたのなら、整備の記録など残している』と踏んでいる。


「ドワーフだからね?」


キースの言う通り、“ドワーフだから”で何故か納得だった。


北の砦の食堂に開けた穴は、見張りを立たせて様子を見るらしい。

あの穴から出入りできるのは便利だが、その分、魔物が入っても厄介との判断だった。


「そっちと並行して進めているけど、森の方はね?」


それから、本命の西の森への探索の話に変わった。

セリは居住部分の調査に興味がいっているので、夕食に集中する。ロードに色々と食べさせてもらいながら、満腹。


食後は、今日の感想とばかりの“ドワーフの居住区”と名付けられた場所を思い返した。

あの寒さの感じない場所で街中にいる気分になって楽しい。


森への調査では体力差から、セリでは獣人の兵士達の行軍にはついていけない。


ロードもさせる気はないが、暇にならないようでひと安心だ。


護衛の方も対象が守りやすい環境に留まるのが嬉しいと、アレクセイは夕食風景を見守っていた。ちなみに、後の2人は先に休憩中だ。


セリとロードの2人にはカナンをつけての調査が決定。護衛3人はキースにつく。


脅威はないが、調査はせめて海までたどり着けるか確認するまで行いたい。


海が使えるかどうかで、とれる戦略が違う。食料事情にも関わる。兵の数と食事などの物品は『極北の城』で補給している。距離があるため、仕方ないとはいえなかなか捗らない。


しっかり管理し、余裕はあるが。


グスタフが決定を下すチームとして動くがシュルトは参加したり、しなかったり。商人として物資の把握などしておきたいらしい。


しばらくの方向性が決まり、食後ののんびりとした時間ができた。

『ドワーフの居住区』の街並みが、実際にある街に似ているか?という話で盛り上がっている。


特に、セリが聞きたがった。

獣人の国の特徴ではないが、もっと北寒冷地である事。

カナンの説明で黒い石畳は、温熱効果も期待できる素材で、採掘して錬金術を使って加工するなど。


知識の話から、使われている素材まで店や特産品の話にはならなかったが、セリは楽しそうだった。


キースはたまに報告の指示を出していていしがしそうだ。グスタフは持ち出した書類を見ている。おおまかな事を書いてある、内容は採掘記録らしい


うとうとしてきたセリに、部屋へ戻るかと言うところで…

緊急の要件で、騎士の報告が入った。


「魔物の中規模の群を発見、こちらに到着する可能性があります!」


指示が飛び、騎士の召集。

獣人の兵士達は、遠くで魔物の咆哮が聞こえていた。


カナンをつけて、部屋で待機のセリには聞こえていない。


“キースの近くにいる”のが正しいかもしれない。ロードと、グスタフも出るらしい。



「寝れる?」


警戒体制で兵士が動く中は、たとえ建物の中でも落ち着かないか。

ロードと離れたことも関係するかもしれない。


「部屋にいるから、行ってきていいよ?」


カナンにも仕事がある。セリが部屋にいればそれができるが

護衛でもあるので、その提案には頷けない。


服のまま眠る。

セリにも緊急態勢の心構えはできている。

今は待機の言葉通り、すぐ外に出られる格好で目をつぶって休んだのだった。

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