7-酒盛りの夜

眠い時間が来た。

セリは寝る寝る準備が整っている。食事が終わり安全な寝床で、寝かせつけのロード付きだ。


テントから2人で寝る用に、普段使っていたものに近いため違和感なく使えている。あとは瞳が閉じられれば完全に寝る、そのギリギリで持ち堪えていた。


豪華なテントには夫人が寝かせられすでに眠りについている。その外で護衛兼夜の見張りがいる。交代のため休んでいる者もいるが。


広く高価なテントを利用する筈だったキースは、グスタフのテントで書類を見ている。そこにオッサンとコックさん。世話役でシュルトが居た。


その近くで、酒を呑んで話している3人が気になるセリ。混ざりたい気持ちと、書類に方も気になるが。

“他の人達が楽しそう”という気持ちの問題で。体は“眠い!”と訴えている。


ぽんぽんとロードが寝かせにかかっているのも、セリには追い打ちだ。

「もうちょっと起きてるぅ」

既に眠く、機嫌が悪い上に、子供がえりしている。いや、12歳だった。

意地になっていても、体疲れているため…もう少しで落ちる。


しかし!楽しそうなのが悔しい。ロードは甘やかす方だが、セリのために寝かせる方向で甘やかした。


「朝は美味いものをつける。」

「うう…果物食べる」


惜しいような、夜の見張りもする必要がとセリが考えていても。

見張りは交代で待機組みが受け持ち、どちらにしろセリにはさせない。


やっと、しょうがないと妥協して寝る気持ちになった。


うとうとと、眠るのをロードが見守る。セリは寝てしまえば外で人の声がしようとも起きない。なので、多少うるさい酒盛りも見逃していた。



酒を持ち出した、ソラス。話をするには酒。情報部でも兵士でも常識。呑めないなら食い物を出すが。


その意図に気づいているカナンは、酒を楽しみに混ざった。

標的は、細目を夜空に向けているクエンにだ。


「生きてる…。」大変に体力のいる行程だった。


オッサンはコックさんは酒が強くない。


情報?


間諜だろ?


2人の情報部、その振る舞いから見通していた。

クエン、怪しい。


動き、目線の先。質問の仕方や探り方。その違和感が情報関係を操る人材だと結論づけた。


オッサンはリーダー、兵士であるが動きや動機はそのまま

コックさんは専門職の一般人。


酒で全部話しはしないだろうが、会話で探る。

「セリちゃんに教えたのオマエだろ!オレバレたんだぞっ」

「え、子供にバレたのぷぷっだっせええ〜」


「いい性格だわ、このお人。」


3人で呑んでいるだけに見える。楽しそうにも見えたが大人の情報戦が…あったのかなかったのか。酒に混じってわからなかった。


そんな騒がしさが流れてくるグスタフのテントには、書類と酒入り紅茶を準備したシュルト。キースの質問に答えるオッサンがいた。


「へえ。魔物の減少?」


異変には気づいていたが調査の人員は割かれなかった。

「お貴族様は外に出るのも嫌になってね。」


人の国の貴族は、血縁者の継承が多いらしく。偉いが役に立たない人物が多かったようだ。


そうじゃない人間が、こんな場所にまで追いやられないだろう。この森の危険性と、獣人の兵士と出会ってしまうかもしれない土地に。


それがなぜ来ているのか。答えは、見栄だ。

前線に行ったという箔をつけるためだろう。正しくメッ金を貼っただけの行動に、付き合わされ命を落とすなんて嫌だね?


そんな実情を読み取っていた一方で、グスタフは地図、土地の情報と魔物の報告、狩猟の成果記録などの情報を合わせ、どの方角、地点に集約しているかを静かに計測していた。


なぜ、魔物がいなくなったか?

いいや、移動したのか。


強い魔物が生まれたか?しかし、この範囲にまで及ぶとは思えない


今までの記録、魔物の行動範囲。


それが示唆する危険性を正しく理解できるのは、この研究者から始まるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る