6-拠点に到着

「この先だな」


グスタフの言葉から、拠点の近くまで戻ってきた事を知る。急な下り坂が続き、天気は曇天。遭難しているような錯覚も、ロードの背中にいれば潜んでしまった。


セリはちょっと滑った事から、ロードの背に負ぶわれていた。

(ちょっと雪で滑っただけなのに。)

歩幅の違いと体力がない自覚はある。セリの年齢では体力がある方だが、同じ年頃の子と行動を共にしていないので。それを認識できる環境ではなかった。暗い足下も不安ですんなり乗っかった。


捕虜扱い3人の男達も、スピードが上がったがなんとかついてきている。


シュルトが配っていた飲み物も力を貸しているのかもしれない。

“体力ポーション”と言っていたが、何が入った液体なのだろうか?


それでも全体の速い移動だったために、息が上がっている。


「じゃ、先に言ってるわっ」

先触れに、カナンが走っていった。


「よく動くなあ。身軽だし。」


ロードに話しかけていたセリが呟くと…

「俺もあれくらいいける」

「うん。」


それは知っている。と返したらちょっと機嫌が良くなった。日が沈み、



あたりが暗くなってから、川の拠点に着いた。炎が、灯りのなって浮かび上がっている。その光にちょっと安堵があった。背から降りた。


「お帰りなさい」

獅子の獣人、ライリーが迎えてくれた。その返答の…


“ただいま”はロードに振り向かされて、言った。両手でセリの頰を包み、強制的に顔を見合わせる。痛みはないがビックリして見つめ合う。


ロードの瞳が言うならば、“俺には?”と言った意味だろうか?

「お帰り」とセリが言えば、上機嫌になった。


テントに入り、

(ちょっと疲れた。)自覚した。真っ直ぐ帰ってきたとはいえ、勾配のある道を疾走してきた。実際走ったのは最初の方だけだったセリでも、疲れはする。


「これまた、増えたな。」

拠点で待機していた1人、ザイルだった。


「あー世話になる。」


それに答えたオッサンだったが、2人並んで苦労人の感じ。


「ああもうっ歩きたくねえ!」

狩りに出て帰ったら移動だったクエンは、体力の限界のようだ。


夫人を“キース様用テント”で休んでもらう。着替えを手伝い、休んでもらう。


「薬草するデス!」

回復魔法はかける本人の体力も使うので、衛生士のビクトールが動いている。それを手伝うことにした。


シュルトが食べれそうな物を聞いているし、食事の準備はほとんどできているようだ。


帰ってきたら食べられるようにしておいてくれたのだろう。ありがたい。


釣った魚らしきものが入ったスープをもらった。

シンプル塩味。


「メインはもう少し、」

「手伝います!」


消化に良いよう手を加えるのだろう、コックさんが嬉しそうだ。

「味は薄めで…おおハーブですう!」


移動の最中は特に口数が少なかったけど、疲れが飛んだのだろうか。


砦で、料理する機会はなかったらしいからその分触れていたいのかもしれない。



「はいはーい、メインも焼いちゃうよお!」

元気そうだ。それぞれがひと息ついた。


夫人に消化の良い食事会と薬湯を飲んだもらい、先に休んでもらった。


温かくしてあるし、穏やかな寝息も聞こえる。



食べ、報告会だ。


セリは着替えを渡されたが寝衣だ。


「もう、寝るだけだからいいでショ」


夜の見張りが免除されている。

(しょうがないか)と思い着替えた。


キースを中心に、情報の擦り合わせを行っている。


4人の人間を捕虜として、極北の城に連れ帰る。

1人、体調を崩していて、皆従順な態度である事。



「では、城に知らせを出して迎えを呼んだほうが。」


「動かすより、ここで休ませた方が良いかな?」

「手順を踏んだ方が、受け入れもスムーズに済むと思います。」


ザイルの進言に、キースが思案顔。


寝衣に温かな格好のセリも、話を聞ける位置にきた。ロードが温めたミルクをくれたが、どこに持っていたのだろう?


花の蜜が入っていて、甘かった。

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