29-グループ編成
夕食を片手に食べ、本の内容をもう少しと言って伸ばした時間だったが…
もう夜だ。
「セリは寝る時間。」
すっかり・どっぷり暗くなった外は、子供は寝る時間まで深まっていた。
キリをつけられた事で、セリは不服な顔をした。
シュルトが、“ぶっ続けの話”と“まだ続きそうな勢い”に待ったをかけたところだ。グスタフとキースはそのまま(放置)でいいが…
体力の違うセリを強制的に休ませる。このままやらせては、セリが倒れるまでやってしまいそうだ。
その考えに行き着いた、ロードも寝かせつけに賛成した。渋々のセリはロードの首に抱きつき…
“ご自由にどうぞ”な気持ちで、揺られながら寝室がある部屋へと戻っていった。
お土産に借りた本も忘れず、持ってもらっている。
見張りのシュルトと、護衛役のカナン。まだ本の内容に興奮している様子のセリ。
ロードはゆったりと抱きとめ、眠りを誘うように歩いて自分達の部屋に戻ったのだった。
2人っきりじゃないのを渋く思いつつ。借りてきた本に気が行くセリを宥め、興奮して話してくれるのを聞きながら髪を梳いていれば…ようやく眠った。
今日はすぐ寝かせてしまったが、朝風呂にしても良い。
俺が風呂に入れてやりたいと伝えれば、そう言えば承諾してくれるだろう。セリは風呂が面倒なようだが、嫌いではない様子だ。
愛しい番が、自分以外に興味を持つのは不服だが。あの“楽しくってしょうがない!”と言った瞳は綺麗だ。セリに近づいてくる男では無いなら、このまま様子を見ても良い。
穏やかな眠りを見ながら、物騒な思考を通常運転しているロードだった。
その内心を知れは、保護者の2人の疲労がどっと押し寄せるだろう。
自覚を持って行動して欲しい。無理だと感じているが共通の願いだった。
その夜、団長は獅子のカリスマな雰囲気のままに、内心はため息を吐いていた。
上が無理を言うのもわかるが、報酬として出されたため承諾する方向ではあった。
しかし、
賓客の1人が、動くとなるとまた違う。護衛を希望する下心のある者。
畏怖する者。それに加え、人間の子に興味を持つ者。
最後は、竜の尻尾を踏みかねない。
(逆鱗に触れるが正しい言葉だったか?)
とにかく、それを回避する方法まで提示されていた。
『セリの関係者でまとめる。』
最近、部屋の外の護衛任務についた3人は、手回し済みと言うのがなんとも。
「暗躍か。」
立場上身についた事で、『暗躍と言うほどささやかな事だよ?』と声が聞こえてきそうだ。
「私は無理だが。」
人数はまだ欲しいだろう。
拠点を守るのに、安定した経験者。新兵でも実力がある者。
それに当て嵌まる2人、“セリの関係者”という条件さえ含む答えを
出させられたことに…
承諾しか答えは、ない。
しかし、長と名があるのだ。条件に口出しはしようと決め、今日の仕事を終える。
従者にも仕事終わるよう言ってから、妻に会いに行くことにした。
愚痴くらい良いだろうか。
息子に声をかけるか。遅い気もする。面会時間にも遅いが
こうしてほとんど面会は成されなかった。
今日は1人で部屋まで行くことにし、息子には後日約束をしてからにしよう。
先延ばしとも言うが、既に息子も騎士である。団長としてなかなか、父親としての顔を見せる事がない。今は夫として行こうと。
魔獣退治より緊張して、歩を進めた。
鎧もなく、剣もなく。必要なお筈だが。
夫婦関係というのは、子が生まれて変化があっても難しいものだ。
部屋に行っても断られ、すれ違いここまで冷めてしまった仲を修復できるきっかけだ。やれるだけやろう。
弱気になる心を叱咤して、医療棟の妻の部屋へ向かった。
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