24-希少性

グレーの尖った結晶

標本にされた緑と黄金の植物

紅玉のまん丸い石

黄色がかった土色の石

薄いブルーの水晶


セリに説明するために地図のように使ったそれぞれ。ロードは何か知っていると思うのだが?知っていたとして、セリから遠ざける事もない。


希少な結晶、特殊な石。標本にするのさえ大変な植物。

値段をつけたなら…。


その説明をする前に、訪れた者がいた。

「休憩しに来たよ?」キースだった。


『“様”はなしでね?』と食事会の席で言われたため、公の場では様をつける事で落ち着いている。


「珍しいね?」


そう言って柔らかいチーズのケーキに、花の蜜を加えている。もちろん、熱い紅茶が淹れられた。


セリは積極的にあるものを試しているが、高いと知っていた花の蜜の使い方を今知った。

(今度やってみよう)

高級品も食べられるときに納めておく事に、遠慮はない。というよりそんな様子を見せればロードが勧めるだろう。


この後、察知したロードがセリのミルクに花の蜜を入れれるよう手配したりする。視線で。

その準備をしたのはもちろん、商人のシュルトである。



パイの話をしたら『食べにくる』と宣下した通りにやって来た。部屋の前の護衛にも顔パスだ。


「地図の話は?」用事はあったらしい。


「ドワーフ達の記憶と記録はまとめた。あとは情報部のものをもう少し開示を求める。」


グスタフの返答に頷き、カナンに目線が流れた。

「情報部って、動き悪いの?」


仕事してるのか問われ、誤魔化し笑いで答えた。それは答えでもある。

書類が探せていないのだと想像できていた。

(オレは当時の救出に関わった獣人のリストアップと確認は済ませている。)


トバッチリだ。所属だっただけでお偉いさんに睨まれている。


キースは、明確な答えを求めていないようで、セリの方を向いた。


視線は、今もセリが触れている鉱石やら魔石。


「へえ。変わった物があるね?」

「どう使う物なの、これ。」


持っている『紅玉まんまる石』は、人為的ような気もする。色も見慣れた生活用の魔石とは異なり濃く。血のようなと表現されそうだが、中に異物などない奇跡的な石だ。


宝石であっても納得しそうなくらい。


セリの知識に、『宝石は磨かなければ綺麗に光らない』とあった。そんな石を磨いてお金を得れると聞いて、売れるのか疑問だった。


実用性を考えてしまうのは、生活を優先していた故か。


「魔導具の核にしたり、付与に使えるよ?」


(こんな高品質じゃないけどな!)

カナンの利用したことのある高い魔導具でもこのサイズはない。つまりそれより高価な、上をいく。


(粉末にするのカシラ。)

商人の知識から一個を使った値段より、粉末での取引を想像するが。こう言ったものは希少性と流通のなさから、ぽんっと高額の取引になる。


支払いの方が、すぐに大金を出せる相手限定なのもあった。

個人ではなく、組織にも売れる。



「魔力をギュッて、ね?」


キースは簡単にいうが、魔力量と出力で質に差が出る。キースは自分の魔力が希少で貴重なのを自覚がないのか?いや、した上で軽く言っている。


セリの教育上良くない。

カナンとシュルトの意見は、それぞれの経験則で同じ結論だ。


そして、キースの作ったものは高価な品になる。

“献上しても良いくらい”の。


金銭感覚の不安が、また加速しそうだ。

キースに言ってもしょうがない。環境的に、自分でお金を使うことさえ稀なのだから。


「この水晶、付与に使ってみたいなあ。」


回復魔法の付与なら、とんでもない品になる。

上級ポーションのような効果が見込める気がする。


「持ち歩きづらいんじゃないかな。」


セリの発言で、やめになったが。残念だった気もするし、胃に優しい結果になったのかもしれない。

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