23-遠い国

「ロードはどこか遠い国に行ったことがある?」

セリの問いは、舟に乗ったことは?海を見たことがある?


子どもらしい興味と好奇心。絵本に描かれていた夢物語は、実際にあるもの史実を載せることもある。


セリの生活では、国というものの意識が薄い。

雪深く、町より外れた場所の教会育ち。その生活は肉を狩りに行くくらいには、逞しかった。


どこかの国、国王、大きな街でさえ、『絵の中で知った物語』だ。


ロードはひとつ鉱石を掴み、ふかっとした敷物の上に乗せた。

「ここが城だとして…」

その尖った結晶は、なんとなく医療棟のようにも見える円柱だ。

色はグレーのような、紫にも見えた。



「獣人の国は森と砂漠地帯もだな。」

その場所には、乾燥させた植物達。緑が残ったものと小麦のような色。実際の距離はさっぱり思い描けないが、国と何があるかは子供の絵のように何となくわかる。


「獣人の国が、川か森を抜けてこのコースでたどり着く。」

スィーと動く指は、城から森に見立てた植物の下側をなぞった。


上は何本も川がある。荷物を持っての大人数の移動には向かない。

「商人がたまに川から来てた。」


セリも知っていた、川は少数向きに商人の移動に使われる。

“森で魔物に襲われるか。川の流れを味方に魔物をやり過ごすか。”

どちらにしても危険だ。


「団体で雪が降り積もるまでに、この城へ来て雪をやり過ごす。」

紅玉のまん丸い石を置いたところ

獣人の国は特質によって様々な容姿の者が住んでいる。そのから来ている子達に、療養の必要な者もいるが毎回のことなので、予想はつく。


ロードの置いたまん丸い紅石に国があるらしい。

「獣人国。その南に砂漠の国と…海の国にも行った。」


黄色がかった土色の石に、薄いブルーの水晶が置かれ、

南に行った指先がもっと西に行った。


「セリの行きたいのは、東だな?」

ロードの行った事がある国は、とても遠そうだ。しかし教会はそこまで遠くないと思える。


自分の足で帰ろうと新たに決める。



「ここは、竜人が住んでいる。」

獣人の国より南下した。砂漠の国に近づいている位置。


「暑いの?」“砂漠イコール暑い”とセリは知ってはいた。


「まあまあな。湿気であちぃ。」

雪に囲まれた生活、隙間風に悩まされる建物で育ったセリの想像ではわからず、考え込む。


「風呂場みてえになるんだ。」


モワッとした湯気を思い出して、とりあえずの納得をセリはした。


「砂漠は、火の近くみてえだ。」

「火傷するじゃん。」


「ああ。服装には気を使う。」


薄い布だの、魔道具や魔力布。気候や住民の魔力に合った形で発展している国々だ。交易もある。


ないのは、人間の国だけとも言える。その話にはならず魔物の話になった。


魔物も毛皮が魔力で守られ鱗を持つ魔物が多いとロードの話に、

食べられる物を聞くのが、セリらしい。



そんな内容が気になってきたカナンに、

「休憩しない?」


それを受け入れ片付けにかかる。


「スイーツタイムね。」


その動きに気づいたセリは、手伝いに向かった。スルリと出て行ってしまったセリがいた空間に、侘しさを感じる。ちゃんと行ってくると声をかけては行ったのだが。


結局、後を追った。手伝った。


“柔らかいチーズにジャムを乗せたケーキ”.

さっぱりした味に、ジャムを好きなように乗せた。



「パイはシチューに使って、フルーツを入れて焼きましょうか。お肉のが良い?」


その悩ましい質問にセリが知恵熱を出す前に、先にフルーツでそのうちミートパイを出すと予定を立てた。


食べているうちに話題は、おもちゃにしていた石は植物の値段の勉強に。


訂正を要する話題に、セリ金銭感覚を修正する試みを必至でこなす商人と護衛だったが。


グスタフの研究心から、『訂正の作業が倍はかかった!』とだけ言わせてもらいたい。保護者役の2人だった。


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