14-故郷
セリは冒険者という職業があると聞き、採取と調合を少し学んでいたようだ。
『狩りで魔物を仕留めるには難しいか?』
『小型のものなら狙ってもいいかもしれない。』
狩人から教えを得て、実際に獲物を糧になった。
「町には行かなかったのか?」
「行商が下の町に来てるのは知ってたんだけど。国の息がかかっているから、子供とか人を売り飛ばすって商人もいるって聞いたから。」
孤児院は狙われやすい。僻地なら尚更、目が届かない。
そんな状況を思い浮かべれば、聞き手の方が暗い雰囲気になるもセリは思い出せる記憶を辿った。
「教会と運命神の教会は、山を登った先。洞窟が近くにあって…」
隠れて暮らしていたのだろうと思わせるものが話の節々に感じる。
「古くからある隠れ家のような機能のある教会だった。建物があるとさえ、知られていない。隣町に行く経路から逸れて、どこから来たか場所もわからないのだ、とか?」
セリの断片的な記憶では、辿り着けない。
「隠れ里、ネ。」
カナンが考えるのは、情報部の見聞きした情報でのうち該当する場所。
広い森で、獣人に排他的となると調べられていないだろうな、と結論づける。
「迫害を恐れて、隠れて生活するってのは聞くケド。」
シュルトの方が、耳にしているかもしれないが。隠れているなら代々の商人が立ち寄るだけの場所の可能性が高く、情報網にも引っかかりそうにない。
やはり場所に心当たりはないようで、セリは話を変える。
「差別とかあった地域だけど、過酷な環境では
目を瞑って、協力してたらしいって神父様が言ってた。シスターに獣人が居たこともあるって。」
昔はたくさん獣人も居たらしいが、今では特徴がある人間を蔑視するお偉いさんがいるため、この地にとどまらないよう勧めている。仲が悪いとまで言われていなかったのが、悪化している。
「へえ。シスターもいんの?」
最初から獣人と関わりを絶っていた訳ではない。ここ数十年のセリが生まれる前の話を聴くだけだったが。
「そう。怪我してたのを治すまでとか、逃げている準備に滞在したとか。」
運命神の“寄り添う教義”に則り、保護をするのは今も続いていた。
「魔導具もないんじゃ不便ねえ。」
「魔法で切り抜けてた。」
普及しているため、魔導具がない生活を想像できない。
「火をつける小さい火魔法は、皆んなできるように。雪の中で少しでも暖がとれるように。」
確かに、魔導具がないなら自分の魔力でどうにかしようとなるのか。
全員ができるわけではないと思うが。
セリが出す、指先ほどの火ならできそうだ。
「水魔法は不人気だった。」
続いたセリのぶすっとした言い方は不満を表している。
「セリの得意な魔法は、水だろ?」
ロードの言葉に頷くセリに
「なんで不人気だったの?」とすんなり疑問を投げれば〜
「雪を溶かせば水になる。」
雪には困らない土地柄だ。
「水魔法が冷たいからって、文句をつけられる。」
「あ〜。」納得の声が上がった。
手を洗ったり、水が必要な時。冷やしたわけではないが冷たい水では、文句も出るか。
「嫌がられるし、どうせならあったかいお湯が良い!って言われたから。練習した。」
健気な事だ。
「熱湯は危ないから、小さな火をいっぱい用意して水の球に入れるの。」
蝋燭ほどの火を、掴めるほどの大きさの水球を出して見せた。
とても攻撃には使えない大きさと威力と温度。
しかし、そこに使われている操作性と魔力量はなかなかの物であっても。
“とても褒めにくい”
正直、魔導具に慣れた環境では、『それだけ?』と言いたくなってしまう。
その事がわかっているのかもしれない。哀愁漂った雰囲気のセリは紅茶を啜った。
「せっかく、あったかくできるように、火魔法の操作性が上がったのに。」
“しょぼい”
そう口にしたセリが、しょんぼりしたのをロードが撫でて慰めていた。
とりあえず、クッキーを出して気持ちを上向けてもらおう。
シュルトが動き、グスタフは花の蜜を勧めた。
すぐに気持ちを切り替えられるセリが逞しいと感じるの面々だった。
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