第三十四話 川の底

雪豹は魚目当てなのか

川を伺う、仕草を見せている。



セリの獲った魚狙いなら容赦しない。

ロードはそう思うものの雪豹は、気まぐれに動いている。


興味があるのか、それほどでもないのか?


カナンはジリジリと護衛の位置についた。

脅威は感じない。


が、子供の気まぐれのような動きを目で追う。


セリは気にせず、釣り糸を垂れる。

ロードが温かいお茶を飲ませたりと甲斐甲斐しい。


そうして、1匹釣れた


ペロッと舌を出した雪豹に気づいたが

あげるか迷う。

セリが手のひらに乗せれるほどの大きさで、

最初の1匹をあげてしまうと、今後も強請られそう。


その逡巡を知ってか、

ロードがさっさと魚をしまった。


無視である。

セリは

「次も釣れるかな?」

たくさん取れてからお裾分けしようと、切り替える。


氷は張っていない川だが、所々で凍りついた植物や

霜が降りた土があり、風も冷えている。


寒さはロードのおかげであったかい。

ぬくぬくとセリがロードの懐で丸まっていた近くで


「ハックショイ!!」


カナンだった。


驚いたままセリは温かい飲み物を出そうとし、

ロードは“魚が逃げる”とカナンを非難の目で睨んだ。


雪豹はびっくりして固まっている。

ピンとした耳、警戒に立ち上がったが途中で止まった姿勢。


(ちょっとマヌケな感じで可愛い。)

横目で確認した後、カナンに飲み物を勧めた。


「紅茶だけど」


禁酒を言い渡されている。入っててもいいんだよ?

とちょっと涙目だ。


任務中でも少しくらいなら問題は全くない。

暖を取るため、飲むくらいだが

きのこと一緒にちょっと呑んだのを、シュルトに咎められた。



ロードにも渡したセリが、雪豹には


水球を出し、火魔法で温めていた。

温いくらいにはなっているだろう。さらっとやったけど、びっくりだ。


「どーやったの、それ?」

「雪を溶かすのと、お風呂沸かす時に覚えた。」


同時発動は大変だと聞くが、セリちゃんにはそうでもないらしい?


セリの認識では、『お湯が欲しい時、

確か風呂を沸かすくらいしか役立ちそうにない?』と答える。


「相手にお湯をかけてもね。

凍ったら溶かすのに便利だけど。」


考えるやつはいるが、できるかと有用性については別だった。


雪豹が川に向かって、魔法を放つ。

凍った魚が浮かび、流されていく。


川底にいたらしい

雪豹には拾う手段がないらしく、セリが網で掬い上げた。


凍った魚を食べる気はないようなので、

火を起こして焼き魚にして渡すと食べた。


あぐあぐとたべている姿が可愛い。

食べ終わって、ベロっと舌舐めずり。


そっと首元を触ると撫でた。

褒めながら触るとぐるっと甘えた声。


徐ろに。川で再び魔法を繰り出し、凍った魚が手に入る。


全てこちらに押し出したことから、

“お礼にやる”という意味なのか?


かなり大漁になった。

更に撫でるその毛の滑りをしっかり堪能したセリだった。

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