第三十五話 お帰り

「そろそろ帰ろう」

ロードに声をかけられると、セリが撫でていた雪豹も上体を起こした。


ちょっと名残り惜しい手触りだが「バイバイ」とお別れを言う。

チラッとこっちを見て、森に入っていった。


凍った魚は全て魔法カバンに、収納してくれたらしい。

ここで捌かなくて良いので楽だ。


あの量はひと苦労。

大きさもあって、食事を作るのが楽しみだ。


ロードがセリを撫でる。

(もしや雪豹を撫でたかったのでは?)


とセリがロードの様子を伺うと



「ついてくんなよー。」

雪豹を見送って来たいたカナンが近づいて言った。

「もう帰れるか?」


それに頷くと、跡片付けとばかりに火の始末をしに少し離れる。

ロードの撫で方が


シスターのものに近い。慈しむように触れる。


ロードには感謝している。

この環境も、与えてくれる温度も離し難いと思っている。

そんな気持ちから

ちょっとサービス精神みたいのを発揮したくなった。


「にゃー」


さっきの雪豹ほど触り心地が良いとセリは、思わないが

可愛さを表現してみたり、して?


凍りついたように固まったロードに、

どうすれば良いかわからないセリ。


カナンが振り向いて、その光景を見た。


瞬時に、セリは腕の中に居た。

視界がロードの胸元でいっぱいになり、足が浮いた。

「?」という状況。


ロード、奪取。


「ちょっおい!オレの護衛対象を持ってくな!!」


セリを抱えたロードは、(早く巣に帰ろう)としか考えていない。

愛しさが振り切れてしまった。可愛い!!


「護衛を置いてくなって!」

後方から追いかけるカナンの声を聞きつつ


セリの視界は、景色の流れて行くのを見た。


(速ーい)

必死で食らいつく形のカナンを応援しつつ


(これは、すぐ城に帰れるんだろうな)

ぺとっとロードに抱きつき、抱きついたセリだった。



「そう。もういいから、離しなさいよ?」


「ぜーはー」息を整えるカナンから事情を聞いたのは

迎えてくれたシュルト。


ちなみに、「アレ、ハァっ…止めて…」とだけ言い伝えた。


お風呂に入ると連れ込みそうな勢いのロードに、

独りで入らせることにシュルトが決定。


「ちょっと落ち着きなさい?」


このままの勢いでは、危険と判断。アウトだ。


カナンにロードを預け、セリは座らせた。


「男は狼なんだから、可愛いことする時はタイミングをみないとネ?」

セリに遠ましで嗜めている。


「狼は、カナンでしょ?」


人間の方の文化では、動物というかつて神とともに天界に住んでとされる。


その子孫として、獣人が生まれたとされ

地上に降ろされた。


その中に人間は入っていないとされるものと、

猿という獣の子孫とされる言い伝えたがそれぞれある。


そのため、動物の比喩表現が残る人族の文化。


セリにはうまく伝わらなかったようだ。

これから獣人の社会で過ごすなら、まあ必要ないかもしれない。


男の対応を教えるべきか。

と考えるシュルトだった。






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