第18話 組み手

『極北の城』の外に出る事が決まり、セリは体の調子を整えるために行動した。採取依頼で歩き回るだろうし、魔物も出る。


組み手で勘を取り戻そうとしたが、ロードでは相手にならない。

セリがすぐ捕まり、飛ばされて、組み合えなかった。


ロードは対人戦が得意ではないらしい。

主に、手加減が。


ロードの手に捕まえられ、プランとしているセリは、慰めに頭を撫でたロードを見て思った。


(不器用?)


そもそも、組手でセリの体格、力に合わせるのは大変だ。

身長からして、違いが大きい。また、大事な番(つがい)だ。心理的にも萎縮する。


“万に一つも傷はつけないが、その代わり組み合えない。”


ので、手加減は難しかった。

それを体験して理解したのでロードとは、魔法の練習に付き合ってもらう事を約束した。


ロードの鉄壁なガードは魔法を打っても怪我をしない動く的になり、使い方の指南もしてもらえる。

水魔法と氷魔法で重なる部分もあるのか?


そこおはよくわからないけど、『空中で作れる足場』は、真似たいと思う。


なので今は、

カナンを相手に、構えている。


相対してみると、体格の良いカナンが、気負いなく立つ。

対人戦、捕獲や影の仕事で手加減も得意だ。

「おっしゃ。来なさい!」


カナンが声をかけ、

セリは、一瞬に雰囲気を変え、踊りかかった。


「んっ!良い蹴りっ」楽々とカナンが受ける。

体格差もあり軽いため、一撃としては入らない。


狙いも良い。褒めてあげたいところで、

カナンの経験上

嫌な感じがして、セリの手首を咄嗟に取った。


「・・何か持ってる?」


頷いたセリは手を広げる

「当たり。」


手で隠せる程の木でできた、串。

組み手なので、先端に尖りはないが黒いインクがつけてある。



「狙い、急所?」

首を狙ってたと思われる軌道に、カタコトに問う。


「そう。狩りでも使えた。」


“魔物相手なら、魔法で弱点を突くが

対人の場合は手で隠せる道具で狙え。


非力でも、子どもでも獲物を仕留められる方法だ。”


「習った!」元気に答えるセリに、悪意も敵意もない。


「誰だよ?!」

カナンは見知らぬ人物に文句を言った。実際は空に向かったが。


『セリちゃんに暗器なんつーもん、習わせたの!』


暗部の使う暗殺用じゃねーかよ!子供に教える物ではないと思う。一般人の使う武器ではない。狩人でもアウトだ。


油断しきってたら、当たってた。


「砦のおっちゃんの1人。内緒ね?」

動作は可愛いけど持ってるスキルは可愛くない。


アレに、痺れ薬。眠りに毒。

状態異常を狙った容赦ない攻撃。


実戦でも使えそうな技の練度だ。

とくに、蹴りが軽くて油断した後のアレは

(オレでも当たりそう。)


掠っただけでアウトなものを塗ってたら?ヤバイ。


実際に狩りや襲って来た魔物から逃げる隠している手段だった。


食料保管庫を狙うネズミに向けて、練度が上がり

ちょっとした薬草の知識を使えば、もっと殺傷能力が上がる。

それは毒だけが使い道じゃない。


(絶対教えたやつに文句言うって決めた。)

カナンが決意している時に、ロードはセリを指導している。


「軌道も良い、型も空中でのバランスも綺麗だちゃんと身体のバランスがとれていり。筋力のなさはまだ成長してないから、後だな。


負荷より柔らかさと魔法を鍛えよう。」

「うん!」


仲良さそうだけど、ツッコミなしか?


「末恐ろしい、わ。」

すっごく疲れた気分のカナンだった。




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