第17話 準備と知識

食後のお茶

…になっても、隊長は去って居なかった。


キースは結局食事が終わるまで話しかけられていて、

「もう帰ってくれない?」同行をキッパリ断った。


「セリは抱えて走れる、ロードが守る。僕の護衛は十分。」

繰り返し、理由を言って突っぱね、取り合わない意思表示。


「他の隊も気にかけています。ご検討を。」

“受け付けない”と言われても、しぶとくお願いしてる!


(やっと帰るんだ)

帰り際、その様子を見ていたら、目が合って隊長に睨まれた。


すぐ視線は外れたけど、目の敵にされてるなあ。

おじさん、大人気ない。


着いて来た騎士たちは、最後まで声は出さなかった。

マナーもしっかりしていて貴族に護衛もつく騎士でも、上がああだと大変そう。


扉を閉じたカナンは、ため息混じりに戻って来て座った。


「他からも来たら大人数になるものネ。」シュルトも人数を増やすのは反対なようだ。


「雪に慣れていないから、お荷物なんだよねー。」

(そのキース様の言いようは、慣れているのだろうか?)


「僕は魔導具あるから大丈夫だよ?」

何故。ふとした疑問に、答えが来るんだろう。頷いてわかったと伝えておいた。


(読心術って本当にあるんだろうか)と考え出すが

セリの場合、わかりやすくキースを見た所為だった。


「大人数では使えないものね、アレ。」


シュルトさんは知っているのか?アレが気になる。

「当日になるまで秘密。」とキース様に言われたので、何か考える。


火の魔石を灯す、火を吐く従魔がついてくるとか?

もふもふであったかい魔物の毛皮で、もっこもこ…。


想像が迷走してくる。


「せっかくのこだわりのランチに邪魔だったわネー」

「お肉おいしかった!」


確かに、和やかな雰囲気の食事にはならなかったが食事自体は格別だったので、その気持ちをセリは大声で主張した。


密かにロードが、セリに旨い肉を狩ると決める。


「良い肉だったな。贅肉が煩かったけど。」

「贅肉、隊長?」


カナンが言った贅肉で、隊長がタプタプ感のある顎だったのを思い返す。

あだ名かな?



「ふふっまあ、書類や政治に熱心なタイプだからね?」


文官タイプも来ているのか。この城、広いから組織があるんだな。

ついでに、派閥とか政治的背景なんかありそう。


セリが耳にしたことのある大人の話の内容は、愚痴が多い。

それでも、組織にはそう言ったものがあることは事実で、よく聞いていた。子供と軽視されて秘密めいた事を聞く機会も多かった。


それをセリは理解できていないのだろうか?

そこから、綻びのカケラを見つけることもあるのに。


「じゃ、場所を変えようか。」

一団は、ロードの部屋に戻ってきた。


「ここが一番、来客を断れる」らしい。

シュルトとカナンの2人が言う。


ロードは、ここでお願いして来てもらった立場で

しつこい対応はできないそうだ。


(配下な立場じゃないのか)と言う理解になった。


そしてまた、グスタフの計画に沿って、採取依頼を達成するためコースの検討をしている。


訓練で森に入る事もあり、その時の情報も突き合わせている。

費やす時間は1日、寒いので日暮れまでと決まっていた。

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