第16話 参加希望

「失礼致します。」


妙に丁寧な物言いは、キース様がいるからか。

セリでは食事の匂いはわからないが、

ワクワクと昼食が配膳されるのを待つ。


しかし、恰幅の良い獣人の後ろには騎士が数人いるようだ。


配膳に来たのだろうか?

食事はあるかな?と気になるくらいにはお腹が空いている。


正直に、目線で確認した。

後ろの騎士に知った顔だと気づく。


“もう少し待ってろ”


目でにメッセージを送ったのは、垂れ耳の犬獣人、アレクセイ。

セリが頷いたのを見てからは、素知らぬ顔で騎士然として居た。


(早く食べたい)と思いながら、待てのように黙っておとなしくしている。



「やあ、隊長が配膳をしに来たの?」


キース様の上品な問いには“お呼びじゃない”という遠回しの意味が入っていたりして…と応援する気持ちがわく。


「お食事はお待ちしましたが、少々お話を良いでしょうか?」


(まるで昼食が人質に取られたみたいだ。)

セリは不貞腐れた。態度は隠せなかった。


「子どもを外の任務に連れて行くと聞きまして。

我が軍からの同道のお誘いもあるかと…」


話題は、セリに話が来た採取依頼についてらしい。


連れてけって事?直談判に来たのかなあ。今じゃなくて良いのに。


許可があるんだから、文句つけて良いの?


「我が隊からも護衛を是非に。

特に子どもが居ては、心配な面が多いでしょう?」


(ああ。子供は連れて行くのに、自分のところへ誘いがないのが不満なのか。)

態度がもう、邪魔者って扱いだ。

子供がいるってだけで邪魔にされる事はよくあるけどね。


「君の隊もだけど、体力面でついてこれないでしょ?

グスタフは専門家、シュルトは知識があるし僕の世話係。


護衛は2人で十分だよ。」


2人は、ロードとカナンかな?

あー。派閥違いで面倒なのかなあ。…長くなりそう。


「お腹空いた」ぽそりと言った呟きは、隣の席に居たロードには伝わる。

頭を撫でて慰めてくれるが、食事が冷めないと良いけどー。



「セリなら担げるでしょ?

おたくの隊はついて来れないときに、どーするの?」


「くっそれは、ですね…」

隊長は、苦し紛れなのか目で食事の配膳を指示する。

統率力のアピール?帰る気はないね。


「そこは、待機や魔物の討伐に当てられます。数が少ないのはそれだけ

動きも取れないかと。」


「夕暮れには帰ってくる距離だよ?それに、このメンバーで火力が足りないって?」


まだ話てるけど、食事にありつける。


セリのお守りという建前で

キース様に近づきたいっていう本音が展開されている。


セリは聞こえてくる声より、もう目の前に来た食事に目がいっている。

「服着てる」


ティーポットに被せるカバーのように、布で保温したもの。

ドームのような金属?のカバーもしてあった。魔石が埋まっていることから保温の魔導具なのか。


(ありがとう!)


騎士達の配慮で、ほかほかと温かい食事は守られた!

おかわりできる量なのか、このメンバーで食べ尽くせる量が準備してある。


頼んだら、よそってくれるんだろうか?

騎士は貴族への配膳マナーもできるらしい。


たぶん普段よりグレードアップした食事に、席についている皆の

マナーを見て学ぶ。


まだ、隊長が話しかけ、キース様がいなしているが。


そんなやり取りはもう気にせず、

セリはロードにステーキ肉を切ってもらう。


机が高い上、切るのに力がたりない。

会話には入らず、ロードに世話を焼かれながら


肉を頬張った。

「美味しい。」


ボリュームがあるため、全部は無理だが食べれない分は

ロードが手伝ってくれる。


味わい、堪能しつつ昼食が進んでいった。


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