第12話 雪の散歩

防寒にぐるぐる巻きを避ける方法があった。


「俺の懐に居るか?」ロードにくっつく事。


『動けないので嫌だ』と答えたら、魔道具を出してもらった。

小袋で温かい。体に巻きつけることもできる。ポケット付きのベストに入れるため、火傷の心配もない。


後は足元をかためるだけだ。

雪で滑らないよう、入ってこないように。


良い靴なので、それほど浸水はないだろう。

ビショビショになると寒いし、動きも悪くなる。

サイズも良く、軽い。


ぴょんぴょんと跳ねて確認していると声がかかる。


「お、じゃあ行くか?」

散歩にカナンが乗り気だった。


『身体が鈍っている』と溢したら、「散歩にでも行く?」と言い出した。


木の上や屋根の上なんかも進む変則的な散歩だ。

「褒められたものじゃないから、こっそりな!」


『落ちたら危ない!』と反対なロードとシュルトの2人だったが、セリの水魔法を知ってオッケーを出した。


“水球をクッションにする”速さと正確さ。

雪を纏わせ柔らかくもできる。


難点は「冷たい」ことか。いや、とても冷たい事だ。


「なんでこんな物作れるの?」シュルトの疑問にセリは子供は屋根に乗せるのを禁止されたので、魔法で雪おろしをしていと時にできるようになったと説明した。


魔力操作が凄い。

落ちる時のクッション、衝撃の緩和。

雪に埋もれない防御、雪洞窟も可能だ。


これは、危ないと反対できない。

「落ちたら即、帰ってくるコト!」


行くと決まってから、シュルトの準備には、風呂の用意もできていた。

湯が冷めないか心配したら、保温が効くと驚きの性能。


(まだ知らない物があるなあ)便利な物に感心しきりだった。


服装や装備については、ロードから妙な提案もあったけど

以前より断然軽く、温かい。


動き回りたい気分だ。


まだ午後の時間。日差しははないものの雪も止んでおり、屋根の下の道は周囲にも雪はない。

「お湯で滑らないように溶かされてんの。」


通路を維持するのもここの兵の仕事らしい。

登りやすそうなポイントまで移動する。

「どこまで行く?」

「病棟」


即答したセリが最初に居た塔の部屋は、今は使用されてない。

その窓は塞がれ、侵入者は捕まったものの久しぶりに訪れる。


その侵入者のルートで。

まあ鳥獣人だったからほとんど飛んでたと思うわれるけど。


「登れるかな?」


セリが登れるか興味を覚えていた。

崖だったら無理な高さだが、木々を建物を伝う。


できるだけ、無理せず。


セリは身軽だった。


「お〜っなかなか動けるのな。」

「追うぞ」


悠々と2人が浮く。


体格の良さとは反して、動きに重さはなかった。

身体強化の魔法と属性


氷で足元を固め、ロードと

と風でバランスを整え、危なげなく移動するカナン。


雪がなくても使える手段で情報、斥候向きだなと思う。


セリは、足元を水魔法で確認しながら慎重に進んだ。

よくやっていた方法で、慣れを感じさせる。


身体が凝り固まっていそうなので、より慎重に。


後ろの2人は気にせず、

あまり目立たない様音を立てず散歩を楽しんだ。


もちろん、誰ともすれ違いはしないが景色は変わって見える。


移動をしないセリには真新しい。

雪一色でも。


サクッと雪を踏む音。

無音ではない、人が動いている気配。


知らない場所で、知らない人達が住まう場所。

その上を軽快に跳んで行った。


表情には出ないが、楽しんでいる歩みだった。

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