第13話 塔の上

木々が途切れ、高い塔が立つ

その続き廊下の屋根から見上げた。


(外からじっくり眺める機会はなかったな。)


部屋では、白いという印象だった。

その外観は、白っぽいレンガに赤茶色が混じる。塔という印象でそびえ立つ。


つまり、足をかける場所がない。

レンガの凸凹程度で、身体をもちあげらない。


獣人の身体能力ならできるのだろうか?セリでは無理だ。


「頂上まで行ってみたかったのに。」


内部から上がる構造で、出窓もなく雪が積もらない。

魔術で保温機能があるのは見てわかるもにではないが高機能が付いている。


見上げていると、後ろの2人が追いついてきた。

少し遠くまで見てきたようだったが、息も切らさず会話している。


「見られたかな?」


「まあ何人かはな。」

「チクられないといいけどー。」


目撃者を潰した訳ではないようだ。


(戻るしかないか。翼があれば飛べるのだろうけど。)


腕力で指の力?

風も吹き付けているのに出来るのかな。


「セリ、昇りたいか?」

「行きたい!」

即答したものの、方法はロード任せだ。

抱える氷柱のようで先は尖っている。

「ツララ?」


槍のような先端を塔に向けた。投げるポーズで。


「オイ…」焦ったカナンの声が、

ヒュオっと風を切る音で一瞬、遮られた。


バキッと先端が崩れた音壁のあたり、氷は刺さってる。

くっついているが正しいかもしれない。


氷柱を投げつけて、足場にするようだ。


「力技。」

はしゃぐセリは、嬉々として足場の確認に勤しむ。


軽々作ったようだが

実際は、魔法と腕力と狙いの正確さ、補強する魔力を込めている。精密さ

と、色々おかしい。


「うわっ、これ…どー証拠隠滅すんの?」


「暖房で溶かして落とす。」

「…危ねーなあ。」


下にいてあの氷の塊が落ちてくる?

心配になったので、塔の麓で待機するカナン。


塔に生えた氷の棘に

塔が傷まないかしんぱいになったが


セリが近づき手で叩いてみると、投げつけるではなく

生やすに近いらしい状態らしい。


「足場に良さそう」

ニヤリと笑い合い、氷の棘に飛び乗った。


下は見ないほうが良い。


カナンは下で待機している。

けして登るのが怖かったんじゃない!


体重が心配だった。

「あの細い足場で、オレを支えられないって!」


まあそうだろう。


出来上がっていく、螺旋の階段だ。

木登りのように

氷で足を滑らせないよう、慎重に体重移動する。


ちょっとした綱渡り気分。


頂上を目指して、

じくざぐに宙に階段が出来上がる。


少し息が上がる


不安より、高さによる風が強くなる。

息が上がってきたところで



頂上。


ふぅっと息が整うのを待ちながら、

ロードに手を振るセリ。


落ち着いたところで、カナンの姿を探すため

下を覗き込んだ。


モヤっと雪が舞う白くみえる中、ポツンと茶色の髪。

あれかな?と言うところに手を振る。


「あまり乗り上げるな。危ないぞ?

子供は頭のほうが重い」


(それもっと小さい子じゃないだろうか?)

と言う事を考えてたらロードはセリを抱き込んだ。


『どっちにしろ危ない』


カナンならそう言った

なんなら下から叫びたい。



ロード抱えられながら、遠く。

視線を外の景色に。



遠く、思い描く

(あっちかあ)


孤児院の方向とされている

確認されていない場所


隣の国扱いか?



色々わからないが寂しさと不安な思いに、蓋をした。


「戻ろうか?」

日が陰る

風も強くなるだろう


「そろそろ降りる」


さてどう降りるか

セリは塔の中に入る事を考えていたが

見つかる可能性もある。見張りの兵が巡回しているからだ。


考えをまとめていると

「さっさと帰ろう」

用事が終わって即撤収とばかりに、ガッチリ!

ロードに抱きかかえられ、落下速度は


直滑降。


風が下から吹いたようでブルリッ

宙に浮いた階段を降りる様だった。


吹き飛ばされないのは、優秀なロードの加減で


その駆け降りるような

氷の足場は



セリも使ってみたくなる魔法だった。


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