第5話 思い出した

「ここにいるんだろ?!通せっ!」

扉の外が騒がしくなった。


会議は終わっていたようだが、お偉い人達が成り行きを見ている。


(若い声?)と言っても成人は済んでいそうな男のもの。

…嫌な予感。


バンっ!!

勢いよく開いた扉

転がった人影の他に…


突進して来た影が、目前まで迫る!

私は衝撃に身構えて、目を閉じた。




「コイツが君をつがいと言っている、竜人だ。」

そう紹介されるも間近にいすぎて顔が見えない。背の高さもあるけど

ガタイが良い、軍人だろう事だけわかる。


それより気になるのは、周囲に光り輝く魔法陣の軌跡。

緑色で魔法文字と呼ばれるもので描かれている。


(凄い、魔法だ。)


風の魔力で目の前の人を拘束しているみたいだ。

展開の速さ、魔力量、位置取りも完璧に展開されている。


目前の竜人?の男は、拘束を筋力で抵抗しジリジリ近づいている。

“筋肉は裏切らない”ってこういう事か。


魔法に対抗できる筋肉に尊敬した。


周りでは人間の子供が、いつ泣き出さすか心配していた。反して落ち着いているのを見て内心驚く。


静寂が訪れたのは一瞬だった。


パリンと割れた音。

窓ガラスより軽く、ティーカップを割った時に近い音か?

すぐ近く。


ギュウッと両腕で抱きしめられ、

「俺の唯一」頭上から聞こえる声。


頬に触れる感触に、固まるセリ。

黄色の瞳と翠色の髪、男の顔があった。


“野生では、強敵と遭った場合に硬直してしまうらしい。”

死んだフリ?と言った自分の過去の発言。

そんなことを思い出しながら、されるがまま。


小さい女の子が、お気に入りの人形にギュウギュウするような状態を再び受けている。


セリは脱出を諦め、ひと通り相手の気が済むまで待とうと思った。

体格の良い大人に抱きつかれて振り解けはしない。隙を待つ。

「俺と帰ろう?」


投げかけられた言葉に焦る!

(それは不味い!)この男を相手に。逃げられそうにない。

セリが断る前に声がかかった。


「未成年の保護は法で決められている。ここで療養を兼ねて預かる。」

エルフの議長が言い渡し、

「わたしがお預かりします。」ナナン医師が言い添えた。



「俺の番だぞ!!」

大きな声に吃驚したのを、隣に来た医師に心配された。


「まだ療養が必要です、健康診断も。」

「家でする!」

離すものかと言わんばかりの勢いで抱き上げられた。


(わあお。視線が高い。)


暢気なセリの心情とはかけ離れて、重々しく議長に告げられる

「環境を変えるのも、体に負担がかかる。それにお前の家は南だろう?」


話が進む中、抱っこされているのはどうにかならないものかと思うも

口を挟めないセリだった。






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