第5話
ーーーそれから大きく事が運ぶ。
一ヶ月しない内にコンラート陛下の戴冠式を公に行った。
その際はエルマさんではなく、慣例通りに教皇様が行い、祝辞を述べる。
いつものてるてる坊主じゃない豪奢な司祭服と帽子で『どうどう?』と見せられたのは内緒だ、いつもお茶目なお爺ちゃんだw
ちなみに元王と元王妃は王都の外れの屋敷で軟禁状態での生活を贈っている。
王妃は一応蝗に噛み切られた傷はちゃんとヒールで回復してやったが精神的ダメージが大きく、時折怯え叫ぶらしいが、元王が甲斐甲斐しく面倒を見ているらしい。まぁかなり脅しておいたからね。
ジル母ことアンナは王都に戻らずこのままアルトマイヤー寺院で修道士として生活する事を望んだのでそれを許可した。
元々庶民で信仰深い女性で慎ましやかに生活したかったらしいので、今の生活は穏やかで安心できるらしい、今度バザーのお菓子作りに誘おうと思っている。
あと隣国の有能な宣教師はスカウトした、いやはやびっくりさ!ミスタク主人公の側近の男、ディビドだったなんて!
現時点で20代前半の、やや癖毛の茶色の髪と糸目の優男の見かけに惑わされてはいけない、コイツはアサシンのクラス持ちで清廉潔白な主人公の行動の裏、闇の部分を引き受け暗殺でもなんでも汚い仕事でもなんでもこなす男だ。
ただINTが通常の術士系のキャラより値がかなり高いせいで大体のプレイヤーがいつの間にかアークメイジからの賢者に無理矢理クラスチェンジさせるのが定番だし、攻略本にもオススメされているし、ストーリー上アサシンでないと出来ないだろうに、プレイヤーのせいでクラスは賢者になっててツッコミが入ったりとアイデンティティ的にどうよ...とファン内で物議を交わしているキャラだ。
「兼ねてより大預言者様の噂は聞いておりましたが、その力本物なのですね...」
ディビドは預言の力は半信半疑だったらしいが、最初に出会った時偽名を使っていただろうにエルマさんついディビドって言っちゃったからそれを預言者の力と信じちゃったのだよねぇ...ごめん。
「できればこの先の預言に関して王妃の件の様に裏付けが欲しいのです、力を貸して頂けませんか?」
「エルマ様、こちらこそ寧ろお仕えさせて頂けるなんて光栄です...どうか貴女の手足のようにお使い下さい」
ディビドは宣教師として活動しているが、実際はある目的のため...彼は悪魔を憎み禁呪の解放を止めるために(大概は貴族や豪商などの連中や術士であるメイジの好奇心によって封印解除を行っている場合が大体)スパイや情報屋のように様々な情報を仕入れるための隠れ蓑としてその立場を使っていたと本人は白状した、その上で自分はとても使える存在だと述べた。
主人公君ごめん!ディビドは私が貰い受けた!
ちなみに手足のように使ってって言った以上、ディビドには例の地下墓地にマックス氏と3人で繰り出しレベル上げして、アサシンを辞めさせ隠密にクラスチェンジさせておいたw流石に賢者にさせるのはアイデンティティ的に心苦しいので無し!正直今は賢者より間者が欲しかった訳だしw
隠密のクラスはスパイとして使い勝手のいいスキルも多く手に入るので(INTとAGLアップや別人に能力そのまま成り代われる変装、隠れ身など)ありがたがって貰えたw
レベル60あたりになったあたりから『エルマ様が言っていた神託の裏付け情報を探りにまわります』と言ってぶらりと旅に出て2、3か月に戻って報告をもらうようになった、めちゃくちゃ有難い!
公式ガイドブック情報でカスタードクリームのたっぷり入ったアップルパイが好きだって書いてたから戻ってきた時用意しておいたらその事にもびっくりされ『誰にも教えてもいないのに...やっぱり本物の預言者...』と呟かれてしまったわぁ
そして破滅フラグことジル殿下はストーリー通りに王になったコンラート陛下を守るためにと北領騎士団に入った...何故だ...普通に側近として働くものだと思っていたのに...しかも北領騎士団で配属希望の場所が国境付近を選びやがって、その場所がバーレに近く、アンナさんに会う名目で2週間に一度やって来るようになった!しかも毎回のように口説いてくるの本当に辞めて欲しい...
実はゲーム上の歴史ではこの先隣国との国境付近での領土争いがあるが、その争いをジル殿下は収める事になる。
そしてその実力とカリスマを発揮させ、そのまま騎士団を掌握、王家に対する恨みからその隣国に納められている禁呪に手を出し時期を見計らってコンラート陛下を暗殺、後継者争いが始まった途端にこれから生まれてくるであろうコンラート陛下の娘のアガーテ王女を幽閉させその他の王族の血筋の貴族を惨殺していく...積年の恨み故に禁呪の解放の為の生贄として鎧に返り血を浴び続けながらだ。
でも今回その原因となった事件はこの手で潰しきったはずだ...アンナさんは自害せず今は安らぎを得た生活を送っているし、前王と王妃には罰を与え力を削いだ。
だがジル殿下に会う時いつも予知スキルの警告音が頭に響く...あいつは危険だ!そう言ってるように。
実は懸念していた事がある...今まで起こった預言と称したゲームの歴史...神託と言って気をつけるように行動させても大まかな流れが変わっていたり被害自体は抑えられてはいるが必ず『起こって』しまうのだ。
エルマさんの行動により未来が変わるのではと思っていたが、大きな歴史が変わりはしないという事に気がついてしまったのだ。
もし双翼戦争がおこるなら...ジル殿下が簒奪王となるきっかけは一体何になるのだろうか...
「エルマ様、最近ずっと悩んでばかりですね...」
マックス氏はいつものように心配してくれる。
「できる事は行ったのに未だに不安がね...」
「やっぱりあの忌々しいスケベ王子のせいですか?アンナさんがここで生活しているのをいい事にしょっちゅう寺院にくるようになってますもんね!知ってますか?あのスケベ王子エルマ様のお胸とお尻をエッチな目でじーっと見てたし腰に手を回して触ろうとしてたんですよ!僕が止めなきゃどうなってた事かっ!そんな輩アルトマイヤー寺院...いやバーレ領出禁にしましょうよ!」
「マックス氏ジル殿下をそんな風に言うの辞めなよ~不敬ってその内怒られるよ」
一応嗜めるもいつものマックス氏のぷりぷり怒る姿をみてつい笑ってしまう、エルマさんが悩んでる事と別の方向性で怒っている姿を見るとこの子はあいも変わらずでほっとする。
だんだん成長しておりきっとこのまま長身のフルアーマ戦士になっていくんだろうなぁ、と思う。
マックス氏は絶対にエルマさんを含め全ての人フルフェイスの兜を外し素顔を見せる事はないからどんな顔立ちなのか、目の色も髪型や色も分からないが、行動や喋り方でどんな表情をしているのか簡単にわかってしまうので『全身甲冑姿=マックス氏』になってしまっている。
成長といえばエルマさん自身も成長してはいる...月のモノ来るようになってから主に胸がでかくなってきた...ゲームのエルマさんのFカップあるんじゃない?って胸がこぼれ落ちそうな衣装を着てたエロいグラマラスバディ美女だったからね...
ちなみにでかい胸は目立たないようにサラシを巻いた上、ゆったりした身体のラインを隠すローブで誤魔化している...なんか預言者なのに変な色気はいらんし、若い修道士を惑わすような事はあってはならんからね!
あと寺院のみんな大体エルマさんの神託に絡んだ全行動や浄化と称した地下墓地でのレベル上げやバザーの商品開発に躍起になったりお金稼ぎに情熱を注いだりする破天荒な性格知ってるし修道士や神殿騎士には『蝗けしかけるような怖い奴なんて女じゃねぇ!』と言われてるしww蝗の刑怖さに手を出す輩は今の所居ないしねw(ちなみに前にマックス氏にいかがわしい事を教えた神殿騎士らには蝗の刑を公開処刑のごとく執行したw)
でもお金は寺院の維持管理やインフラ整備に必要だからね!寄付だけじゃあ成り立たん部分も多いのだよ...できれば孤児院や学校や病院を作って維持していきたいしね!
(ちなみに地下墓地潜りで手に入れた使わない装備品とかアクセサリーは売り払ってその辺に使っている)
「まぁあれだ!身体を動かせば悩みも吹っ飛ぶだろうし今日も地下墓地いくか!」
「行きましょう!ダークリッチの5体や10体ぶちのめしに行きましょう!」
そう言って気分転換のため地下墓地にレベル上げに向かった、筋肉は裏切らないからね!
ーーーーー
※ゲーム豆知識
クラスの話
ゲーム上の職業で系列によって何パターンかにわかれる。上位職は結構豊富
今後の話で出てくるクラスメインで。
戦士系
戦士→ナイト→ガーディアン(DF系)
→ナイト→パラディン(AT系)
→ナイト→ビーストライダー(機動力重視、一度テイマーの経験が必要)
→ナイト→ルーンウォーリア
(術剣士、エンチャンターの経験が必要)
→斥候→アサシン(即死系)
→斥候→隠密(サポート系、アークメイジの経験が必要)
→テイマー(魔物使い)
弓使い
狩人→弓戦士→弓闘士(バリスタなどの攻城兵器が使える)
術士系
メイジ→アークメイジ(AT系)
→アルケミスト
(術を使用の際にアイテム必須、ポーション生成で回復も行う)
→エンチャンター(サポート系)
アークメイジとアルケミストかエンチャンターを経由すると賢者(術士系スペシャリスト)になれる
回復系
プリースト→クレリック
クレリックは極めれば神罰系の奇跡を使用可能になるがせいぜい2つが限界。
ただし唯一エルマの固定クラス預言者は全て使うことが可能
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます