宝箱の秘密
泡盛もろみ
宝箱の秘密
ぼくは宝箱の秘密をしっている。
ダンジョンには宝箱がある。
宝箱を開けると役に立つアイテムが入っていることがある。
みんな宝箱をみつけると開けずにはいられない。
ぼくには生まれつき特殊なスキルがあった。
母さんが聖職者だったからか、父さんが治癒術師だったからか、生命力の強さが"見える"のだ。
初めて気づいたのは6歳の頃。
父さんに連れられて初めて自分で兎を狩ったとき。
僕が兎の首を撥ねると、それまで見えていたうさぎの体をつつむ薄ぼんやりとした光が消えた。
生き物が目の前で死ぬのを見たのはその時が初めてだった。
僕は衝撃を受けた。
どうやらこの光は他の人には見えないらしいこともわかった。
僕はこの光をみることで仲間や敵のステータスを予測することができ、父さん譲りの治癒術とあわせて優秀なヒーラーになった。
そんな僕が周りに秘密にしていることが2つある。
1つは、蘇生術が使えること。
蘇生術は使える人間のほとんどいない奇跡のような術だ。
しかし僕はあれが嫌いだ。
もう1つは、宝箱の秘密だ。
宝箱には有用なアイテムが入っていることがある。
一説には、ダンジョンが人を食って吐き出したものだとか言われている。
稀にハズレと呼ばれる空箱もあるが、気づいていないだけで宝箱の中には必ず入っているものがある。
魂だ。
ぼくは6歳のあのとき、魂が消えるときにだけ見せる儚い光に魅せられた。
僕の心はあの光に囚われてしまった。
あれから何度も兎が、鹿が、動物が死ぬところを見てきた。僕は動物を殺すことが大好きになっていた。
動物は僕にとっての宝箱のようなものだった。
そんなとき、父さんが死んだ。病気だった。
父さんの魂の最後の輝きは他のどんな生き物よりも美しかった。
人を殺したい。
もっと人の魂の輝きを見たい。
そんな欲求にウズウズしていたとき、ヒーラーとしてダンジョン探索に誘われた。
ダンジョンの中なら人を殺してもバレないんじゃないか。そう思い機を伺いながらついていくと彼らは宝箱をみつけた。
そして宝箱を開けたとき、そこに人の魂の消える輝きを見た。
宝箱には死んだ人間の魂が入っていた。
宝箱は人の死体が変容したものなのか?
ダンジョンの中でのみ蘇生術がつかえるのはダンジョン内では肉体から魂が離れないから?宝箱にも蘇生術が効く?
いや、そんな細かいことはどうでもいい。
僕が人を殺さなくても、宝箱を開ければあの光を見ることができる。
僕はダンジョン探索に夢中になった。
今日もダンジョンに潜り宝箱を開ける。
宝箱の秘密 泡盛もろみ @hom2yant
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます