第3話 SSランクのパーティ 【KING】
Yは肥大化し、校舎よりも巨躯な図体へと変貌した。
巨大な手には、何かを所持している。漆黒の瘴気に包まれており、全く正体が窺えない。
『そんなのアリかよ!』
「アリに決まってるでしょ?!今度こそ死ね!」
モノクロは今度こそ死を覚悟した。
浮世離れした姿の圧倒的な怪物を前にして。
『ごめん…バルバラ、守りきれなかったよ。』
「ねぇ君、諦めるのは少々早いんじゃないかい?」
突然、謎の男がYとモノクロの間に割り込んできた。
「チッ…キルか!」
Yは、振りかざした両刃斧を止めた。
「これ以上悪さしたら
キルと呼ばれる謎の男は、凛々しく言い伏せた。
銀髪に漆黒のマントがよく似合っているが、服装だけを見ると、Yと似通っている気がする。
「覚えてろよ…モノクロ! 次に会った時には、無惨に殺してやる。」
Yはあっという間に逃走した。
何も武器を持たない男に背を向けて。
「あぁ危ないとこだったよぉ。君、怪我は?」
『だ…大丈夫です。』
モノクロが返答した次の瞬間、思いもやらない言葉が発せられた。
「君、人間じゃ無いよね?」
『えっ…。』
キルの言動に完全に図星を突かれた。
今、なんとも言えない沈黙が続いている。
何を話せば良いのか。
何を話して良いのか。
様々な思索が脳内を錯綜している。
しかし、今は悠長に会話を交わしている余裕などない。
バルバラの応急処置をしなくては。
『すいませんっ、そこにいる女の子を助けて下さい!』
モノクロは静寂を遮り、キルに向かってバルバラの治療を懇願した。
「何を言ってるんだい君は。最初から君一人だったじゃないか。」
『そんなはずな……い。』
さっきまで明らかにうつ伏せになっていたバルバラの姿はどこにも無い。コンクリートに付着していたであろう血痕も見当たらない。
「全く、幻魔の放つ瘴気で正気じゃないのかな?なんたって…それじゃ。」
キルは、親指と人差し指を押し合わせて、指をぱちんと弾いた。
『本当にいたんですよ!!信じてくだ…』
モノクロは指パッチンの合図で視界が霞み、気を失った。
それからどれくらい気を失っていたのだろう。
モノクロが次に目を覚ました時には、見知らぬ場所の古びたベッドの上に寝ていた。
『うううっ。』
「起きた!おきた!オキタ!ヲキタ〜!」
「おい、うるせぇぞ…イルミ!」
「イイじゃん!良いじゃん!豆板醤!」
「だ〜か〜ら〜!チビがびっくりするだろうが!」
「うるさいのはゴッゾじゃね?オーマイゴッドじゃね?」
目覚めて早々、赤髪の女と金髪の男が言い争っている-まったく、騒々しいにも程がある。
まず俺が今、滞在しているのは何処だろう。
部屋の窓は暗幕で覆われているのか、外観の様子はまるで分からない。
『あなた達は誰?! 此処はどこ?!』
俺は、不覚にも気が動転してしまった様だ。
逆立った感情の起伏を
それより何だこの
そうか。
俺が人間になった直後、上手く喋れなかった時に自然と涙が溢れてきた。やはり、ここが人間と消しゴムの圧倒的な違いなのだろうか。
消しゴム自体、無意識に体が動くことは絶対に無い。
やはり、俺は本当に人間になっただと実感してしまう。
「怖がらなくても大丈夫!私たちは安心・安全・安価なSSランクの冒険者パーティだもん!」
赤髪のイルミは、モノクロの顔を覗き込んできた。ついでに、ウインクも添えて。
「安価は余計だボケ!そんなお前はKINGの
「ゴッゾこそ、賭博ばっかりしてして!」
「俺は、パーティの資金稼ぎの為にしてるからいいんだ!」
『すみません…そろそろ現状の状況説明を…』
「ペチャは黙ってて!」
「チビは静かにしたろ!」
ペチャ?
チビ?
さっきから黙って聞いていれば、好き勝手言ってくれるじゃないか。
この二人の第一印象は最底辺のどん底だ。
「うるさいぞぉ、お前たち。」
ある男の声が聞こえた瞬間、騒がしかった二人はぴたりと静止した。
この声は-やはりキルだ。
「兄貴すまねぇ。イルミのやつがなぁ…」
「ゴッゾが私にバッドな
二人仲良く互いに頬をつねり合ってある。
「全く…。久しぶりの来客で興奮するのも理解できるが、もう少し礼節と言うものをだな。」
キルは頭を抱えている。
『すみません…。』
モノクロがキラに向けて話しかけた。すると、キルの目は細くなり、口角が上がった。
「申し遅れてすまなかったね。僕の名前はキル。一応、【KING】と言うパーティのリーダーをやっている。とりあえず…よろしく、新人くん。」
『え?!』
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