第57話 チーム赤、チーム黄も突入!力を合わせて敵を倒そう!
一方その頃、俺とサマーが蜂怪人を倒しながら進んでいるのと同じように、玲さんとスプリングもエージェント達と共に進攻していた。
『チーム
「OU、了解」
玲さん達の所もおおよそ俺達と同じく、最初はエージェント達の小銃とスプリングの魔法射撃で蜂怪人を倒していたが、やがて数の多さに押され、後退を余儀なくされた。
しかし、ただで引き下がるわけもなく、チーム赤のエージェント達は盾で身を守り、小銃を撃ちながら蜂怪人と一定の距離を保ち、時間稼ぎをするようにゆっくりと後退している。
「重くないですか、それ?」
「慣れよ……よし。ガンナー、エリアR3を抜けて後退。敵を誘導しろ」
エリアR3とは、チーム赤の進入ルートにあるT字路の部分だ。
そのエリアの曲がり角を見据えて、玲さんは誘導役のエージェント達が通過したのを確認すると、立ったまま対物ライフルの銃口を向ける。
「耳ふさいでなさい。あと、撃たれる敵は見ない方が良いわよ」
「えっ、どういうことですか?」
スプリングがウインドガンナーを構える横で、玲さんは対物ライフルのボルトを引く。そして自分の忠告の意味を理解せず、キョトンとした彼女を見て目を細くした。
「……あなた、相変わらずピュアね」
「へ?」
「良いから言うとおりにしてなさい。あと私が合図したら、アイツらを一掃できる大技を出せるように準備しておいて」
「は、はい!」
玲さんに命令され、スプリングは息を大きく吸った。
「スプリング・ウィンド・チャージ!」
呪文によってスプリングの武器であるウィンドガンナーに桃色の魔力が貯まり始める。やがてエネルギーが最大まで達して、あとは引き金を引くだけとなった。
スプリングは真剣な目つきとなって、玲さんと同じく蜂怪人が現れるであろう曲がり角を直視する。
やがて蜂怪人が曲がり角の陰から出てきた。怪人達は毒針を連射しながらエージェントを追っていたが、すぐにスプリングの魔力に気づき、目標を変えた。
蜂怪人の集団は威嚇した声を上げて、進路を変えてスプリングと玲さんの方へ飛ぶ。
「今だ撃て!」
そう言ってハンドサインを出した後、玲さんは対物ライフルの引き金を引いた。大砲のような音が鳴り、撃った本人は反動で後方に吹き飛んだが、それでも地に足をつけて体勢を保つよう踏ん張った。
対物ライフルの弾は蜂怪人達の身体を全て貫いて猟奇的な肉塊へと変え、奥の壁に着弾する。しかし、いくら鉄の壁に穴をあける銃弾で身体を吹っ飛ばされても、怪人達の生命活動は続いている。
このままだと、射撃の衝撃でまき上がった土煙の中で、蠢く肉塊は元の姿へ再生するだろう。
「ストームフォース・ソニック!」
だが間髪入れず、スプリングも引き金を引いた。そして風の魔力でできた銃弾がウィンドガンナーから放出される。弾は土煙を払いながら射線上にいる怪人達をかき消した。
対物ライフルが発射された痕跡だけを残し、敵の姿が無くなったことを確認して、玲さんは構えを解く。
「OU、敵は来てるか?」
『チーム
「よし」
玲さんは頷くと対物ライフルを肩にのせ、スプリングと一緒に誘導役のエージェント達と合流した。
「作戦続行。総員、陣形を組み直して進め」
玲さんはエージェント達に命令して、作戦通り奥へと進んだ。
***
所変わって、西側から目的のポイントへ目指しているチーム
『チーム
「OU、了解した」
観測部隊からの連絡を聞いて、ファングは防弾盾のエージェントを前に出るようサインで指示する。
「はぁ、はぁ、はぁ……ふん!」
エージェント達が通り過ぎる横で、オータムは地面に倒れた蜂怪人をメイプルブレードで突き刺した。その銃弾の穴があいた蜂怪人は、第2波の最後の一匹だ。
「いつもこんなことしてるんですか?」
「こんなことってのは害虫駆除のことか? それとも敗者に鞭打つことか?」
「両方、ですかね?」
「前者はそこそこ。後者はここ最近ずっとだな」
「……そうですか」
ファングの言葉を聞いて、オータムは大きく息を吐きながら、ブレードに突き刺していた蜂怪人が消えたのを確認した。
奥からやってきた蜂怪人をエージェントが防弾盾に隠れながら小銃で撃ち落とし、すべて行動不能にした後に、オータムが一体一体トドメを刺す。
そんなやり方で敵を倒しているため、こちらは他二チームと比べて時間が掛かっていた。というのも、射撃能力のあるスプリングとサマーと違い、オータムの武器は剣だ。よって蜂怪人にトドメを刺すには、オータムがある程度近づく必要がある。
スプリングやサマーのようにエージェントが射撃した後、距離を作って一掃することはできなかった。
目標の蜂怪人がエージェント達によって行動不能になっているとはいえ、体液を吹き出してピクピク動く怪人を剣で斬るのは、オータムの心理的負担が大きかった。
「やっぱり斬撃で」
「伏せろ!」
オータムの言葉をかき消すファングの叫び声が響いた直後、奥から毒針の弾丸が飛んできた。エージェントの面々は防弾盾の陰にいたため、伏せるまでもなかったが、オータムは寸前のところで射線から逃れていた。
「今、何か言いかけたか?」
「いいえ、何も」
ファングに訊かれ、オータムは間が悪そうに顔を逸らす。
奥から第3波の蜂怪人達がやって来たおかげで、チーム
『チーム
エージェント達の小銃と蜂怪人の毒針が鳴り響く中で、通信機に連絡が入る。連絡で言った場所は、蜂怪人の巣があるエリアの入口に当たるポイントだ。
作戦では、そのエリアの出入口である三ヶ所にそれぞれのチームが一時待機して、合図と共に中に入る手筈になっている。つまり、予定の場所にそれぞれのチームが辿り着かないと、作戦は停滞し続けてしまうのだ。
「クソっ、オレ達も早く行かないとな……」
このままでは自分達のチームが遅れるだけだと考え、ファングは現状を打開する策を考える。
ふと、目の前で防弾盾を持ったエージェントに目が止まった。頑丈に作られた盾は、自分やエージェント達の身を守り、怪人の毒針を防いでいる。かれこれ何十発と撃ち込まれているが、浅くへこむだけで貫通する様子は全くない。
「おい、その盾を貸せ」
「えっ! は、はい」
何かを閃いたファングは前にいた一人のエージェントから盾を受け取る。
「オレが隙を作る。総員、10秒後に攻撃を一時停止しろ」
ファングの命令にエージェント達は「了解」と返答する。
盾を持ったファングは、飛んでくる毒針を防ぎながら、エージェント達より一歩前に出た。
「ファイターキック」
音声コマンドによってファングのバックルが作動し、脚足部に装着された機械の周りにプラズマが走る。そして10秒経った直後、ファングはエネルギーの貯まった足を後ろにやって、思いっきり地面を蹴った。
足から高エネルギーが放出されて地面が抉れると同時に、ファングは盾を突き出しながら蜂怪人達に向かって突進する。
「ギャシャっ!」
ファングの盾と蜂怪人が衝突して鈍い音が連発する。蜂怪人達は短い悲鳴をあげながらはね飛ぶ。
まるでトラックで引いているような光景だが、ファングの必殺技のキック力を考えると、あながち間違いでもない。
「クッ!」
ファングは蜂怪人にぶつかる度に受ける抵抗を歯を食いしばりながら耐えた。やがて前進する勢いも無くなり、シールドチャージを逃れた残りの蜂怪人に囲まれる形となった。
蜂怪人は毒針を撃ち込むように腕を突き出す。
しかしそれもファングにとっては想定内なわけで、彼女は怪人の体液で汚れている防弾盾を振り回し、叩いて怯ませる。そしてそのまま盾を斜めに構え、片膝を地面につけて体を縮こめた。
「撃て!」
ファングが手に持った盾の陰に隠れて合図を出すと、残りの蜂怪人を狙ってエージェント達が一斉射撃した。銃声が響いたのも束の間、その場にいた蜂怪人は全員、突進と射撃によって傷だらけになって行動不能となった。
「総員、前へ。第4波に備えろ」
流れるようなファングの動作に思わず目を奪われ、オータムがポカンとしている横をエージェント達は通り過ぎ、彼女の命令通り従う。
盾を持つエージェントは前、その後ろに小銃を持つエージェントが立つ。エージェント達が通り過ぎる際に、ファングは自分の持っていた防弾盾をエージェントの一人に返した。
「……どうした? 早く片付けろ」
「あっ、はい!」
ファングに急かされ、そこでオータムは我に返る。そしてメイプルブレードを握り直して、また地面に倒れている蜂怪人達にトドメを刺していく。
『チーム
オータムが怪人達を消していく最中、ファングとエージェント達の通信機に報告が入った。
「エージェント・ゼロ達も位置に着いた。オレ達も、早く向かうぞ」
「はい!」
ファングに返事をして、オータムはブレードを振り下ろすスピードを速めた。
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