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 彼の顔が思い出せなくなる前に、自分も死のうと思った。


 彼のことを思い出す。それだけで、心が暖かくなる。

 失ってから、はじめて気付いた。彼は、わたしの大切な人だった。だから、わたしも死ぬ。


 わたしは、彼みたいに綺麗に死ねないから。煩雑な手続きとかは先にしておいた。遺書とかも一応書いておく。親族はいない。友達には、あらかじめ相談してある。


 大丈夫。いつでも死ねる。


 そう思いながら、今日もひとりでする。

 自分はもうすぐ死ぬんだって思いながらすると、かなり指の通りがよかった。びくびくしながら、彼の顔を思い出す。


 まだ、思い出せる。

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