王都への道のり
081.馬車にゆられてゆらゆらと 1(ソラ視点)
いやはやいやはや。
バカイントレインがあったあの日。
先に帰宅して、ラーナにご馳走用意してもらっているときに帰ってきたアズちゃん達が、そりゃもう気持ち悪そうにしてて何事かと思ったわよ。
大量のゴブリンが目の前で破裂した。これがあの子達が真っ青になった原因ね。
……うん。気持ちはわからんでもない。
破裂したのは『紅蓮』の必殺技だとして。確かに電子レンジに入れられたみたいに破裂しちゃうから気持ち悪いのよね。あの時後からくる大軍を処理するって言ってたから、まさかの『紅蓮浄土』ぶっ放してたのね。久しぶりにみときゃよかったわ。
なんか華の花弁みたいに内部から開いて破裂するから、しばらく綺麗な華見るときに「うっ」って思っちゃったりするのよ。あんた達もそうならないように忘れちゃいなさい。
え? シレちゃんがジンジャーの前で盛大に吐いちゃって凹んでるって?
ああ、だからさっきから元気ないのね。
でもさ、多分ジンジャーのことだから心配してずっと背中とかさすってくれてたんじゃない?
あってる?……あんたら、もうくっつきなさいよ……。
ほれ、元気出して。ラーナが作ったご飯でも食べなさい。
え? なんのお肉かって? あんた達を追いかけてた豚ちゃんのお肉よ。柔らかいわよー。
通常の豚さんじゃなくて豚さんウォーリアーとか豚さんジュネラルとかの上位種もいたからね。これがまた普通の豚ちゃん以上に美味しいのよ。
大丈夫よー。
あの時ぐっちゃぐちゃにしてたのは抜きにしてあるから。
……ん? なによあんた達、顔真っ青にして。
なんて話をしていたら、それ以外にもつらかったことがあったってあの子達は言うわけよ。
「いえ、それは一番つらかったにはつらかったんですけども……」
「あれも、つらかったですね……」
「あれ? あれってなによ」
「……討伐証明にゴブリンの片耳を切り落として冒険者ギルドへ納品しないと、お金にならない」
「あー。確かに数多いと大変よねー」
華になったのはさておき、倒したゴブリンは倒したって証明のために片耳切らなきゃいけないのよね。
死体の耳引っ張ってナイフで切り取るんだけど、こりっとした骨を切り裂くところとか、ダイレクトに手に感触が残るからすっごい嫌なのよ、あれ。
今回は六十体くらいかしら。さすがに吹っ飛んだ頭蓋とかを探してまでやろうとは誰も思わないだろうけども、それくらいをみんなで分担したとして、最低数体は切り落とす必要があるわけだから、まー、全員あれをやったってことよね。
でも、私的には、どちらかというと――
「――その後死体を燃やして処理したり、地面掘って埋めることのほうが大変だし、気持ち悪くない?」
「……それも、嫌でした……」
「放置してたら魔物が増えたり、その栄養をもとに森が拡がるって聞きました。本当なんですか?」
「本当よ。あんた達が召喚されたあの森がいい証拠よ。あの森、常に魔物同士の争いが起きてるからね。中にはあの森から出てきちゃったら人間じゃ太刀打ちできないレベルの魔物がいたりするから。そんなのが動いて際限なく溢れる瘴気や魔素から産まれて現れる魔物をばっさばっさと倒しちゃったら、そりゃ森だって栄養豊富すぎて大きくなるってもんよ」
……あ、魔物の発生原因ってまだ解明されてないんだっけ。……ま、いっか。
アズちゃん達もふむふむって頷いてるだけだし、どこにも言いふらさないだろうし、気にしないでおこうっと。
今もあの森は大きくなっていて、ヴィランの冒険者のオーダーで伐採作業があったりするって伝えたら、四人揃って大変そうって感想を言ってたけど、あそこの木、なかなか切れないから結構な人数が駆り出されるのよね。木材としては優秀ではあるんだけども。
この子達は普通の木こりの仕事みたいに思ってるかもしれないし、チェンソーみたいなのでぱぱっと終わるみたいな想像してるみたいだから、大変なんてレベルじゃないってことは言わないでおこう。いつか経験するでしょうし。
ちょっと喉が渇いたから飲み物を飲もうとしたら、ミィがささっと私の前になみなみと液体の入ったグラスコップを出してきた。嫌な予感がして近くにあった水をぐいっと一飲みすると、ミィががくりと項垂れてる。あんたまさかと思うけど、あれお酒よね。私にお酒飲ましてどうする気よ。
じろっと睨んだら、いつも以上の笑顔でお酒がなみなみと入ったグラスを渡してくる。大事なことだからもう一回言うわよ。私にお酒飲ましてどうする気よ。
「襲う気です」
「お姉ちゃん……もっとオブラートに包んだほうがいいよ……? 寝込みを襲うとか」
「んにゅ~? でもだんなしゃまはあのときおそってきたよ~にゃ?」
聞きたくない! きーきーたくなーいーっ!
聞かなきゃよかったわよほんとっ! 前に私が酔っぱらった時何があったのよーっ
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