076.王都出立前 7(ヤンス視点)
※本話は、副音声付きでお楽しみください。
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「ヤンスっ! シレがあぶねぇ! 走れっ!」
ざくっと何かを斬る
ジンジャーさんはそのでかい体に似合わず――
また同じ
一撃目で利き手の右手が持つ
そんなジンジャーさんが、向こうの戦いをみて、焦るようにヤンスに指示をする。
こっちは向こうよりゴブリンが多いでヤンスが、アズはん達は
だけども。
その焦りの声にシレはんだけの名前が出るってのは、ジンジャーさんもいい加減シレはんと
今の状況で不謹慎なヤンスでヤンスが、周りのカインチームのお嬢はん達も呆れたようにジンジャーさんを見てるでヤンスから、きっとヤンスの思っていることは間違ってないんでヤンス。
「ヤンス君っ! ちょっと本気であっちまずいかも! ジンジャー君の言う通り、こっちのことはいいから向こうにいける方法はあるでヤンス!?」
「セシル!? ヤンス様が移ってヤンス!」
「そういうローザも移ってるでヤンス!」
セシルはんの
リディアはんの【
そんなことを思いながら、アズはん達の囲みに向かう方法を考える。
意外とやり方は多々あっていくらでもやれるでヤンスが、今は急ぐでヤンスよ。
「セシルはんとローザはんとリディアはんも、ちょっと手伝って欲しいでヤンス」
「なにしたらいい?」
「セシルはんはアズはん達のほうに向かって突っ込んでもらって、合図と同時に足をあげて欲しいでヤンス」
「分かったでヤンス!」
セシルはんは頷くとゴブリンの群れに突っ込んでいったでヤンス。まだ説明終わってないので突っ込まないで欲しかったでヤンス。
「私は魔法でも撃てばいい?」
「リディアはんは、合図と同時にヤンスに風魔法をぶつけてスピードをあげて欲しいでヤンス」
「? 痛いわよ?」
「程よい痛みでお願いするでヤンス」
リディアはんは頷くと、一人突っ込んでいったセシルはんの援護に
リディアはん。ヤンスが合図出すまで
「ヤンス様。私はなにをすれば?」
「ローザはんは、ヤンスに速度があがる系の魔法をお願いするでヤンス」
ぼこんっと大きな
シレはんのことになると周りが見えなくなる、とんでもバーサーカーでヤンスね、ジンジャーさんは。
「それだけでいいのですか?」
「……その後は、あのジンジャーさんをフォローしてもらえると助かるでヤンス」
セシルはんとジンジャーさんが
ローザはんとタイミングよく同時ため息をついてしまったでヤンス。
ローザはんも、
ローザはんと二人で意見を
両手にたんまりと
「【
ローザはんの補助
ジンジャーさんもヤンスもどっちも補助
今ならなんでも出来そうなそんな気分でヤンスが、ヤンスはジンジャーさん達みたいに囲まれたりしたらきっとやられるでヤンス。
なので、適度にゴブリンの群れの中をスピードを維持しつつ避けながら時折投擲してゴブリンの動きを封じておくでヤンス。
あっちはあっちで
「セシルはん!」
トップスピードに自分のスピードが乗ったことを確認してセシルはんに合図すると、セシルはんはゴブリンを蹴りつけ様に足を高々とあげてくれたでヤンス。
そこに一気に飛び、
「リディアはん!」
「なるほどでヤンス! 飛んでけー!」
リディアはんの風
時々【ウインドカッター】になってしまった切れ味鋭い風が衣服をぴりぴりと破っていくでヤンス。いつも被っているお気に入りのフードが風の煽りを受けて捲れた際にばさっと切り落とされてしまってショックでヤンスが、今はそれよりもアズはん達のほうに突っ込むほうが先でヤンス。
空からの投擲をしながらアズはんの群れのほうに目を向けると、キッカはんが修羅のごとく敵を切り倒していたでヤンス。シレはんも
でも、ジンジャーさんが言う通り、ピンチなのは間違いないでヤンス。
すぐさま助けにいくべきと、空の旅は終わり着地でヤンス。
目の前にはヤンスに背中を向けてハナはんに襲い掛かっているゴブリン三体。
衝撃を逃がすためにくるりと回って、援護のすぐさま投擲。
背中から針を突き刺されたゴブリン達が動きを止めたところで、ハナはんの
「アズはん、シレはんっ! 危ないでヤンスよっ!」
キッカはんが取りこぼしたゴブリンが一体。二人に襲いかかろうとしているのを見たでヤンス。
素人同然の後衛は近づかれたら何も出来ないでヤンス。
ハナはんもヤンスの声に気づいて後ろの二人を見ようとしたでヤンスが、残りの二体がまた片付いてなくて危ないでヤンス。ヤンスが向かうしかないでヤンス。
ハナはんに襲いかかるゴブリンに投擲しながらハナはんの横を通り過ぎて二人を助けに向かうでヤンスよ!
「シレさん、危ないっ!」
私はキッカが取りこぼしたゴブリンがシレさんに飛びかかったところを見て、とっさに弓を捨ててシレさんに体当たりした。
「うぐぅっ」ってシレさんみたいな美人さんが出しちゃいけない声が出ちゃってたけど、シレさんはゴブリンの標的から逃れたみたい。
「あっ、っつぅっ!」
代わりに、私の左肩に痛みが走った。
思わず倒れこんでしまう。見ると、ゴブリンの鋭利な爪が私の肩を裂いていた。
倒れこんだ私の前に大きな影ができる。
影の主を見たら、そこには緑色の肌をした魔物が、異臭を放ってそこにいた。
裂けた口元からは粘着性の高いよだれ。上半身裸に腰に汚れた布を巻いただけの小鬼。ゴブリン。
にぃっと、私を見た。ぞわっと体全身に鳥肌がたったように嫌悪感があふれ出す。
生理的にこれはまったく好きになれないと、その姿に恐怖を感じた。
「ギィッ!」
腕が振り上げられる。
その腕は、明らかに私を殺そうと振り上げられた腕。
逃げられない。
逃げられなくて、もうぎゅっと目を瞑るしかなかった。
「アズはんっ!」
そんないつも聞いている声が聞こえて、私の体がふわっと浮いた。
誰かに抱きしめられてるような、そんな人肌の感触がする。
「大丈夫でヤンスか?」
私を抱きしめて上から見下ろすのは、さらりと、滑らかな風に弄ばれる赤髪を揺らす、男の人。
きりっとした瞳に整った顔立ち。その顔は心配そうな表情を浮かべ私を見ている。その瞳に私だけが映っているところを見てしまって、自分の顔が赤くなっていくことを感じてしまった。
だれ、この人。
……ん?
ヤンス……?
「や、ヤンス……さん?」
「? なんで確認するでヤンスか?」
いつもフードに隠れてみたことのなかったヤンスさんの顔。
カインやカース君より。この世界で出会った誰よりもイケメンに映るのは、私の気のせいだろうか。
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