076.王都出立前 7(ヤンス視点)

※本話は、副音声付きでお楽しみください。


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「ヤンスっ! シレがあぶねぇ! 走れっ!」



 ざくっと何かを斬るヤンスと直後にごつんっと鈍器をぶつけるようなヤンスが聞こえて、ジンジャーさんの一撃がゴブリンの頭をヤンス吹き飛ばしたでヤンス。


 ジンジャーさんはそのでかい体に似合わず――ヤンスこほんっ。古の世界を救ったヤンス勇者が持つような飾り付けのかっこいいヤンス長剣と小さなヤンスハンマーで戦う、特殊なヤンス二刀流でヤンス。


 また同じヤンスが鳴るでヤンス。

 一撃目で利き手の右手が持つヤンス長剣で突撃してきたゴブリンをヤンス斬り捨して、斬りつけた体勢から振りかぶるように勢いを乗せて左手に持ったヤンスハンマーでゴブリンの頭をヤンス粉砕した音でヤンス。


 そんなジンジャーさんが、向こうの戦いをみて、焦るようにヤンスに指示をする。

 こっちは向こうよりゴブリンが多いでヤンスが、アズはん達はヤンス素人同然。こっちはそれなりにヴィランで戦えるレベルのヤンス冒険者の集まりでヤンスから、あちらをヤンス心配するのはいいんでヤンスが。


 だけども。


 その焦りの声にシレはんだけの名前が出るってのは、ジンジャーさんもいい加減シレはんとヤンスれくっつけばいいのにと思うでヤンス。


 今の状況で不謹慎なヤンスでヤンスが、周りのカインチームのお嬢はん達も呆れたようにジンジャーさんを見てるでヤンスから、きっとヤンスの思っていることは間違ってないんでヤンス。


「ヤンス君っ! ちょっと本気であっちまずいかも! ジンジャー君の言う通り、こっちのことはいいから向こうにいける方法はあるでヤンス!?」

「セシル!? ヤンス様が移ってヤンス!」

「そういうローザも移ってるでヤンス!」


 セシルはんのヤンスナックルヤンス回し蹴りヤンス連撃を受けてゴブリンがヤンス吹っ飛んでいったところに、リディアはんの【ヤンスファイヤーボール】がヤンス炸裂して燃やしていく。

 リディアはんの【ヤンスファイヤーボール】とシレはんの【ヤンス炎弾】はまったく同じもののはずでヤンスが、シレはんのほうが大きいのは、シレはんのほうがヤンス魔力を籠める力が強いからと聞いたでヤンスが、それにしてはヤンスヤンスも違うようにも見えるでヤンス。


 そんなことを思いながら、アズはん達の囲みに向かう方法を考える。

 意外とやり方は多々あっていくらでもやれるでヤンスが、今は急ぐでヤンスよ。


「セシルはんとローザはんとリディアはんも、ちょっと手伝って欲しいでヤンス」

「なにしたらいい?」

「セシルはんはアズはん達のほうに向かって突っ込んでもらって、合図と同時に足をあげて欲しいでヤンス」

「分かったでヤンス!」


 セシルはんは頷くとゴブリンの群れに突っ込んでいったでヤンス。まだ説明終わってないので突っ込まないで欲しかったでヤンス。


「私は魔法でも撃てばいい?」

「リディアはんは、合図と同時にヤンスに風魔法をぶつけてスピードをあげて欲しいでヤンス」

「? 痛いわよ?」

「程よい痛みでお願いするでヤンス」


 リディアはんは頷くと、一人突っ込んでいったセシルはんの援護にヤンス魔法を連発しだしたでヤンス。

 リディアはん。ヤンスが合図出すまでヤンス魔力残しておいて欲しいでヤンスよ?


「ヤンス様。私はなにをすれば?」

「ローザはんは、ヤンスに速度があがる系の魔法をお願いするでヤンス」


 ぼこんっと大きなヤンスがまた聞こえたと思ったら、ジンジャーさんが「シレー!」と叫びながらゴブリンの群れにヤンス突貫していたでヤンス。

 シレはんのことになると周りが見えなくなる、とんでもバーサーカーでヤンスね、ジンジャーさんは。


「それだけでいいのですか?」

「……その後は、あのジンジャーさんをフォローしてもらえると助かるでヤンス」


 セシルはんとジンジャーさんがヤンスし暴れすぎてゴブリンに囲まれたでヤンス。

 ローザはんとタイミングよく同時ため息をついてしまったでヤンス。

 ローザはんも、ヤンス猪突猛進ヤンス仲間を持つと苦労するでヤンスね。


 ローザはんと二人で意見をヤンス共有したところで、ヤンスもそろそろ動くでヤンス。

 両手にたんまりとヤンスを持って、ジンジャーさん達を囲むゴブリンに思いっきり投げつけると、様々なところに刺さったヤンスの痛みに、ゴブリン達がひるむでヤンス。


「【速度向上スピードアップ】。すぐに効果のなくなる補助魔法ですが、加速だけは何倍もありますのでお気をつけてっ!」


 ローザはんの補助ヤンス魔法を受け、一気に勢いをつけて走るでヤンス。

 ジンジャーさんもヤンスもどっちも補助ヤンス魔法を使うことができないでヤンスから、こういう時に補助ヤンス魔法を受けると、自分がとても強くなったように感じるでヤンス。普段と違う見える景色の移り変わりに目が回りそうでヤンスよ。

 今ならなんでも出来そうなそんな気分でヤンスが、ヤンスはジンジャーさん達みたいに囲まれたりしたらきっとやられるでヤンス。


 なので、適度にゴブリンの群れの中をスピードを維持しつつ避けながら時折投擲してゴブリンの動きを封じておくでヤンス。


 あっちはあっちでヤンスピンチとはいえ、こっちもこっちで向こうの倍以上のゴブリンに囲まれているでヤンスからね。余裕もないんでヤンスよ。


「セシルはん!」


 トップスピードに自分のスピードが乗ったことを確認してセシルはんに合図すると、セシルはんはゴブリンを蹴りつけ様に足を高々とあげてくれたでヤンス。

 そこに一気に飛び、ヤンス跳躍


「リディアはん!」

「なるほどでヤンス! 飛んでけー!」


 リディアはんの風ヤンス魔法が背中を後押しする。攻撃ヤンス魔法でも使われる【ウインドカッター】の応用で風となったヤンス魔法を受けてより高く空へ。

 時々【ウインドカッター】になってしまった切れ味鋭い風が衣服をぴりぴりと破っていくでヤンス。いつも被っているお気に入りのフードが風の煽りを受けて捲れた際にばさっと切り落とされてしまってショックでヤンスが、今はそれよりもアズはん達のほうに突っ込むほうが先でヤンス。


 空からの投擲をしながらアズはんの群れのほうに目を向けると、キッカはんが修羅のごとく敵を切り倒していたでヤンス。シレはんもヤンス魔法で援護して、アズはんも【早撃ち】で牽制しながらいい戦いをしてるのが見えるでヤンス。背後はハナはんが一人で数体を足止めしてるのも、本当にこの娘はん達は初心者なのかと目を疑うでヤンスよ。


 でも、ジンジャーさんが言う通り、ピンチなのは間違いないでヤンス。


 すぐさま助けにいくべきと、空の旅は終わり着地でヤンス。

 目の前にはヤンスに背中を向けてハナはんに襲い掛かっているゴブリン三体。


 衝撃を逃がすためにくるりと回って、援護のすぐさま投擲。

 背中から針を突き刺されたゴブリン達が動きを止めたところで、ハナはんのヤンスメイスの一撃でゴブリンの首が捻じ切れ飛んでいくのを見たでヤンス。思わず当たりたくないと思うでヤンスが、それよりも、今はローザはんの補助ヤンス魔法が切れる前に動くのが先でヤンス。


「アズはん、シレはんっ! 危ないでヤンスよっ!」


 キッカはんが取りこぼしたゴブリンが一体。二人に襲いかかろうとしているのを見たでヤンス。

 素人同然の後衛は近づかれたら何も出来ないでヤンス。

 ハナはんもヤンスの声に気づいて後ろの二人を見ようとしたでヤンスが、残りの二体がまた片付いてなくて危ないでヤンス。ヤンスが向かうしかないでヤンス。


 ハナはんに襲いかかるゴブリンに投擲しながらハナはんの横を通り過ぎて二人を助けに向かうでヤンスよ!































「シレさん、危ないっ!」



 私はキッカが取りこぼしたゴブリンがシレさんに飛びかかったところを見て、とっさに弓を捨ててシレさんに体当たりした。


 「うぐぅっ」ってシレさんみたいな美人さんが出しちゃいけない声が出ちゃってたけど、シレさんはゴブリンの標的から逃れたみたい。


「あっ、っつぅっ!」



 代わりに、私の左肩に痛みが走った。

 思わず倒れこんでしまう。見ると、ゴブリンの鋭利な爪が私の肩を裂いていた。



 倒れこんだ私の前に大きな影ができる。

 影の主を見たら、そこには緑色の肌をした魔物が、異臭を放ってそこにいた。

 裂けた口元からは粘着性の高いよだれ。上半身裸に腰に汚れた布を巻いただけの小鬼。ゴブリン。


 にぃっと、私を見た。ぞわっと体全身に鳥肌がたったように嫌悪感があふれ出す。

 生理的にこれはまったく好きになれないと、その姿に恐怖を感じた。



「ギィッ!」



 腕が振り上げられる。

 その腕は、明らかに私を殺そうと振り上げられた腕。


 逃げられない。

 逃げられなくて、もうぎゅっと目を瞑るしかなかった。


「アズはんっ!」


 そんないつも聞いている声が聞こえて、私の体がふわっと浮いた。

 誰かに抱きしめられてるような、そんな人肌の感触がする。



「大丈夫でヤンスか?」



 私を抱きしめて上から見下ろすのは、さらりと、滑らかな風に弄ばれる赤髪を揺らす、男の人。

 きりっとした瞳に整った顔立ち。その顔は心配そうな表情を浮かべ私を見ている。その瞳に私だけが映っているところを見てしまって、自分の顔が赤くなっていくことを感じてしまった。


 だれ、この人。

 ……ん?

 ヤンス……?



「や、ヤンス……さん?」

「? なんで確認するでヤンスか?」


 いつもフードに隠れてみたことのなかったヤンスさんの顔。

 カインやカース君より。この世界で出会った誰よりもイケメンに映るのは、私の気のせいだろうか。

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