外へ
012.森の中へ(ソラ視点)
※以降お話は複数人の視点で進んでいきます。
タイトルに誰視点かを載せていきます。
これからも本作品をよろしくお願いいたしまする~
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まあ、私としては、しょーじきにいうと、いくら神様から事前に勇者召還があるからなんて情報を教えてもらってたからといっても、ま~さ~か、こんなに待たされるとは思ってなかったわけよ。
でもこの勇者召還の光を見たときに、ふと思ったのは、神様からは、たしかーに、いつ起きるかって話は聞いてなかったし、規模もどれくらいなのかってのも聞いてなかった。
ってことは? 今回のような大規模なのか、それとも小規模なのか、もしかしたら王城の地下とか教会の庇護下の部屋とかで行われる可能性もあったわけだけど、その辺りは神様もおぼろげで分かってなかったんじゃないかなぁって。
そう考えたら、いつかなんてわからなかったんじゃないかな。
神様は万能じゃない。
うん。いい教訓。
というか私が神様のことなんてわかるわけないんじゃん、ねー?
とか思いながら、私は勇者召還の現場の森の中へと入っていく。
最初は深層、更にその奥辺りで召還されたのかと思っていたけれど、森に入って最初のほうで、じーっと見てみればそこまで奥――深奥ではなさそうだった。
「深層ではあるけどもってところねぇ……」
その辺りに落ちてた木の枝を拾ってびゅんびゅん振りながら歩く。さしあたってその木の枝は私にとっては聖剣エクスカリバーってとこね。
折れず、曲がらず、よく切れる。ふむふむ。どこぞの切れ味が鋭い武器みたいね。
私は、世界的には未知とされている領域の封樹の森深奥とかで勇者召還されなくてよかったと思いながら歩く。
「……おや」
少し歩いたところで、人影を見つけた。
疎らな人影だけど、大きな人と小さな人。複数人。
ここに冒険者がいないことは分かってる。
だって、今日は、勇者召還なんてとんでもないことが起きてるから、誰もが緊急事態だと思って領都へと戻って待機してたから。
「ありゃぁ……まいったね」
そうなると、相手は、私からしてみたら、敵である。
召還先まで出来れば戦闘はしたくなかったけども、どうやらそれは無理そう。
なぜなら相手は、
「女の敵っ!」
豚の顔した肥満の人型魔物と、小人のように小さな緑色の肌をした人型魔物。
オークと、ゴブリン。
女性を見たら襲い掛かって味見してから自分の拠点に拉致して如何わしいことをして自分達の子孫を繁栄させる魔物たち。
集団は、私に気づいた途端に鼻息荒く突進するかのように木々を薙ぎ倒しては向かってくる。
ゴブリンは涎を垂らしながら「ぎゃぎゃっ」っと愉悦の声をあげて、臭そうな股布をひらひらさせながら。
オークは豚のように「ぶひぶひ」と声を鳴らしながら顔を歪ませて。自身のもつ斧や剣をいつでも振り下ろせるように掲げながら。
どっちも一ヶ所膨らんでるのが気になるけど、まあそこはどうでもいいし見たくもないし。ゴブリンなんて、見たくもないけどひらひらとチラリズム的に……見えてるしね。
互いに斬りあえる地点までオークとゴブリンが到達。
私は、片手に持った木の枝を軽く振るう。
「……ぶひ?」
オークの体がずれて落ちていく。
ずしゃっと落ちた体についた、豚の顔に向かって更に一閃。
首と胴が離れたことに気づいた豚の顔が、一気に命の輝きを失わせる。びくびくと蠢く体もやがて動きを止めた。
「あんたたちって、顔見てなくても女だって分かれば見境ないのね」
ほんと失礼しちゃう。
この豚さん、最後まで私の体しか見てなかったわ。
あ、狐のお面つけてるから顔みれないから?
……いやいや違う違う。きっと私のこのほうまんなぼでぃを死ぬ最後に見たかっただけね。
私はすとんっと落ちるミィとマイのような絶壁じゃないし。……ラーナには負けるけども。
私がそのおぞましい視線に理由をつけていると、私に向かって飛びかかろうとしていたゴブリンは、何が起きたか分からないままに棍棒のような武器を振りかぶった姿勢のままに死んだオークを見て固まっていた。
そんな隙を戦闘中に見せちゃったら簡単に死んじゃうわよ。
固まるゴブリンに木の枝を振り下ろす。
左右に分かれて倒れていくゴブリンを見て、更に後続に控えていたオークとゴブリンの群れは驚き困惑。
止まった魔物たちに、私の体をじろじろと舐め回すよ――もとい。私を襲おうとした報いの一閃をプレゼント。
ずしゃずしゃずるりと倒れていく人型の魔物たちに一言。
「ふふんっ。真の剣豪は、武器を選ばないものよ」
なんて言ったところで、聞いてるの誰もいないんだけどね。
今日の木の枝は、よくしなるわー。
そこらへんに落ちてた木の枝なんだけどなぁ。
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私がなかなかの霜降り肉と言われて領都でもそれなりのいいお値段で販売されているオークの体を【ボックス】に入れて、領都に戻ったらみんなで美味しく頂こうとじゅるりと仮面の中で涎を垂れ流して我にかえって進み出してから数刻。
回りも、空を覆うくらいの巨大な木が繁る森だから暗いのは元からなんだけど、時間的にも暗くなってきた時間で、場合によっては一度休憩かねた野営を選択しようとした。
しょーじき、あの規模の大きな勇者召還なら、きっと何十人とかの規模で召還されてるんじゃないかなぁとか思うわけ。
でも、私からしてみれば、そんな何十人もの異世界人をこの森から無事領都まで連れて行けるのかっていうと、そりゃ無理。
そうなると、一日、この森で過ごしてもらって、魔物さん達に間引いてもらったほうがいいんじゃないかなぁとか思う。
一応じっとしていれば、運がよければそこまで魔物に遭遇して襲われるってこともないと思うのよ。
私はさっきから何度も何度も襲われて聖剣エクスカリバーで撃退してるけど、それは単純に私が動いてるから魔物も襲い掛かってくるんだし。
いきなり変なところに召還されちゃったら、パニックにはなるだろうけど、それでも救助を待って危なくなさそうなところに逃げ込んでじっとしてたりすると思うのよね。
出発する時も思ったけど、どうせ助けたら私が保護してあげなきゃならないんだから、数人でいいのよ数人。
誰かに言い訳してるわけでもないけども、とりあえずそんなことを思って『ボックス』から野営の道具を出そうとした時。
「……光?」
ほんの少し明るい光が遠くに見えて、私は警戒する。
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