第13話 生まれ変わり
「でも、制服をクリーニングして返さないといけなくて。店長に手渡しで返すってルールだったから、いつ行くか連絡して、店の事務所に制服返しに行って、最後の告白をしたの」
2年間の片思いの、最後の告白、か……。
「私の誕生日に行ったんだ。それで、もう諦めるつもりで、これで最後だから、嘘でいいから、恋人みたいに珠央って呼んでって頼んだの。小泉さんとしか呼ばれたことなかったから……笈さんの声で、誕プレに名前呼んで欲しかったの」
ただ、名前を呼ばれるだけのプレゼント。それでも、嬉しかったんだろうな。
「そしたら、笈さん、すっっごく驚いた顔したの。その顔見た私もめっちゃびっくりしたくらい」
「へ? なんで?」
「後から聞いたんだけど……あの時、
「生まれ変わり?」
俺ら3人の声が、重なった。
「最初に私がバーミリアンの面接に行った日、明里さんの誕生日だったんだって」
母の誕生日は、3月25日だ。中学卒業して、すぐ応募したのか……。
「それで、私の誕生日……3月10日なの」
!!
さんがつとおか……。
3月10日は……生後約半年の俺と散歩していた、母の命が奪われた事件の日だ。
……珠央が、母の生まれ変わり?
いや、そんな即日生まれ変わりとか、まさか。
「面接で履歴書見た時から、私の誕生日が明里さんの命日だって、印象に残ってたんだって」
そりゃ……残るだろうな。
珠央は、誰の顔を見るでもなく、うつむき加減にしゃべっている。
「笈さんも高一からずーっとバーミリアンでバイトしてて、大学生になって、高校生バイトで明里さんが入ってきたんだって」
伝説のオーラとパーフェクトフェイスの出会いが、そんな当たり前の出会いだったことにもびっくりだわ。
てか、当時のバーミリアンすごいな。
「みんな明里さんに話しかけ辛かったらしいんだけど、明里さんがガンガン自分から仲良くなれるように頑張ってる姿見て、この子すごいなって、好きになって」
すごいな、母。俺なんか、人目を避けて生きていると言うのに。
「みんなも、いつの間にかオーラ気にならなくなったんだって」
気にならなくなるもんなんだ……。
「で、笈さん、思い切って告白したんだって。その時、初めて明里ちゃんって呼んだんだって。明里さん、今日誕生日なの、プレゼントだね、ありがとうって、すごく喜んでくれたんだって」
えぇ……
誕生日が命日ってだけでも、生まれ変わり説になりそうな上に、そんな……
珠央は平気なんだろうか。
自分に、好きな人がかつて愛した人の影がつきまとっているような……。
「私、笈さんが今も明里さんのこと愛してるの、嬉しいの」
強がりじゃない、本当に嬉しそうな笑顔だ。
「だからこそ、私といてくれるんだと思うから。私じゃ、全然足りないだろうけど……笈さん、明里さんを思い出せてるかなあ……」
「え?」
違う。
それは、違う。
「私、本当に明里さんの生まれ変わりならいいなあ」
「違うよ」
思いのほか、低い声が出た。
瞬間、空気が凍りついた気がする。
でも、珠央に伝えないと。
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