第12話 馴れ初め
早めの晩ごはんだったから、片付けを済ませて、4人でリビングでテレビを観ていた。
俺と直が3人掛けのソファの両端にダラっと座り、珠央と美菜子がセンターテーブルに雑誌を広げながら、座り込んでいる。
7時から始まったのは、芸能人の両親の馴れ初めをドラマで再現する番組の特番だ。
赤の他人の馴れ初めとか、どーでもいい。チャンネル変えよかな。
「ねえねえ! 珠央さまと竜パパの出会いって? 馴れ初め!」
「えっ?!」
俺と珠央と、同時に変な声が出た。
「あー、俺も疑問ー。40代と女子高生がどう出会ったの? アプリ?」
マッチングアプリで女子高生と結婚とか、息子として嫌すぎるわ。
「違う違う! 私、高一からバーミリアンでバイトしてたの!」
え……
高校生バイトに手ー出した……?
竜パパサイテー、な空気を感じた珠央が弁解する。
「誤解しないで! 店長は私が何回告白しても、拒否ってたの! あ、思わず店長って言っちゃったよ、久しぶり」
「珠央さまからグイグイ行ってたんだ?」
「そりゃもうグイグイ」
おおー、と、謎の拍手を送る美菜子。何の拍手だよ。
「何回も何回も好きな気持ちを伝えたけど、なんか……姪っ子に大きくなったら結婚するーって言われてるみたいな反応って言うか……」
わからんでもないなあ。珠央だし。
「僕は店長で、君はバイトだしーとか、君はまだ高校生だしーとか、まだまだこれからで君は若いんだしーとか、実は僕の息子が君と同級生だしーとか、毎回バリエーションつけて断られてたの」
なぜバリエーションつける必要が……。
「頑張ったつもりだけど……相手にされなくて」
……そりゃあ、自分の子供と同級生だもんなあ……。
「でも、その誠実さが余計に響いちゃって。……私、笈さんの声がすごく好きで」
「顔じゃなくて?」
「顔より声なんだよね、私」
「渋くてエエ声よね、たしかに」
「親と、バイトは高二までって、約束だったの。予備校の講座が始まる限界まで、バイト入って……辞めたの」
「辞めたの?!」
「バイトの最終日にもう1回告るつもりだったんだけど、タイミング合わなくて2人きりになれなかったんだよ」
「ああ……」
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