第7話 藤井寺竜一の特技
「珠央を、どうかよろしくお願いします」
「はい! あ、いえ、こちらこそ、よろしくお願いします!」
父と小泉父が共にペコペコしている。
誠意って伝わるんだな。
たぶん、母にも。
「竜一くん! 布団、ありがとう!」
小泉家の皆さんも、すっかり目覚めたようだ。
それからは、たぶん一般的な家族紹介になった。
目を見ると倒れる相手でも、相手の鼻を見て話せば大丈夫なことに、俺は中2で気付いていた。
顔全体を見るよりも、鼻だけを見てしゃべるのがコツだ。
これに気付いてから、人付き合いがグッと楽になった。
相手も目を見て話すのと変わらないくらい、違和感もないらしい。
だから、俺は人を鼻で識別できる。
クラスメート約30人すら、マスクをしてたって鼻だけで誰か分かる自信がある。
ただ、テレビで一方的に見るだけの芸能人なんかは鼻では分からない。
俺と目を合わせても大丈夫な希少な人たちも、鼻なんかだけでは分からない。
親父、NOVA203の美菜子、NOVA205の直、そしてNOVA204の新メンバー小泉珠央さん。
まさか、この年になって目を見ても大丈夫な人に出会えるなんて……!
さて、小泉家の皆さんの鼻と名前もバッチリ覚えた。
小泉
定年もないし、体が動くうちは働くそうだ。
妻の小泉
長男、小泉
長女、小泉
てか、美羅来て。娘フィーバーすごかったんだろうな。
はじめこそ俺を見てボーゼンとしていた皆さんだったけど、ピザを取り、椅子が全然足りないから立食パーティーするうちに、徐々に慣れたようだ。
大人たちは、お酒が入ったのもよかったのかもしれない。
父と孝二郎さんも、人に仕事を教える難しさの話題で盛り上がり、すっかり打ち解けたようだ。
2人とも山本五十六の
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」
と言う名言を信条としているらしく、いかに素晴らしい人物かを語り合っていた。
名言だとは思うが山本五十六氏に興味ない俺にとっても、父の話し相手ができて良かった。
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