第4話 藤井寺 竜一
伝説の黄金のオーラを放つ母。
世界共通のパーフェクトフェイスの父。
それらを兼ね備えたのが俺、藤井寺 竜一である。
まるで月明かりのような、空気に溶けていくような柔らかな黄金のオーラを放ち、小さな顔に完璧なバランスの顔面を持つ。
全体的に色素が薄いようで、フワフワの猫っ毛の髪は天然で茶色っぽいし、瞳も橋本環奈ばりに茶色い。
身長170cm、体重60kg、中肉中背の高校3年生。18歳。
指定校推薦で進学するので、高3と言えども気楽なものだ。
最近の関心事は、大学進学に向けて何のバイトをしようか?
スマホでバイト体験談を読み漁り、逆になんのバイトもできないような気がして不安になってきている。
やってみなきゃ、何が向いてるかなんて分からないんだろうし、将来どんな道に進みたいかもぼんやりすら決まっていない。
指定校推薦にしたって、高校生の間バイトもしないで真面目に勉強して好成績を残してきたのもあるが、この大学がいい、この学部がいい、とかないから、行けそうな大学に決めただけのことだった。
そんな中、昨日だ。
父の再婚相手、小泉珠央さんと初対面を果たし、なんだか眠れず、今登校中だけど、なんかフラフラする……。
一瞬、地面が盛り上がってグルっと円を描いたように見えた。
足の力が抜けて、座り込んでしまった。
足にアスファルトの感触を感じた瞬間、飛びかけた意識が戻った。
近くを歩いていた違う高校の制服を着た女子生徒が、
「えぇ?!」
と驚いている声が聞こえた。
親切に、「大丈夫ですか?」と俺の顔を覗き込んで気遣ってくれる。
「え……なんってイケメン……てか、なんで光ってるのこの人……あ!カナが言ってた光るイケメン?えぇ…実在したの?!」
余りにも混乱したんだろう。
心の声がだだ漏れだ。
申し訳ない気持ちで、小さな声で
「大丈夫です、すみません」
と、顔を上げてしまった。
俺も倒れた動揺もあって、思わず相手の目を見ながら、さらに
「ありがとう」
と言ってしまった。
「キャ―――――――」
さっきまでの呟きが嘘のような絶叫に変わった。
「キャ―――――無理―――――キャ―――――無理―――――」
周りにチラホラいる人も、こちらを見ているが俺を凝視するばかりで誰も動かない。
女子生徒の絶叫が止まったと思ったら、力が抜けたようでゆーっくりと座り込み、そのまま倒れ込んでしまった。
……しまった……油断した……。
「あーキャーキャー聞こえると思ったら、やっぱり竜一だ」
「あ…美菜子」
制服姿の美菜子と、カッターシャツにスラックスの男子がやってきた。
「またかー竜一。気をつけろよー」
「あ、
半笑いで俺に注意しながら、直も美菜子と共に女子生徒に優しく声を掛け、介抱に参加してくれる。
「私らがこの子は見てるから、早く行きなよ」
「目が覚めて竜一がいたら、また気絶だもんなー」
あはははは!と愉快気に笑っている。
「ほんっと、ごめん……」
「いいよいいよ、竜一も大変よね」
「竜一の顔に慣れるには、10年はかかるからなー」
もはや2人とも爆笑である。
申し訳ない気持ちが少し軽くなった。
ありがとう美菜子。
ありがとう直。
「あ、気ー付きそうだよ」
美菜子と直がこちらを見る。
この2人なら、大丈夫。
「ありがとう」
遠慮ない笑顔で伝え、駆け足でその場を離れた。
「うおー久しぶりに来た!!!!!」
「慣れててもドキューンとくるなあ!!」
意識の戻った女子生徒が、もだえる美菜子と直をポカンと見る。
「お! 気付いた! そりゃー慣れてなきゃ気絶もするわな」
美菜子と直は、また笑っている。
そんなことは知らない俺は、通っている高校の近くまで来ていた。
誰の目にも見える、黄金のオーラ。
世界共通で美しいパーツが黄金比で並んだ、パーフェクトフェイス。
一般市民が生活するには、暮らしにくすぎる!!
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