第50話 前魔王捜索開始
俺は王都にある飲み屋街を中心に必死に聞き込みをしていた。すると以前よりは聞く人の反応があるように感じられる。
ただ、まだお昼前なので人通りはそんなに多くはないので、これからの時間が本格的に情報が集められそうな予感がする。
やっぱりマオはこの飲み屋街、歓楽街の周辺を中心に動いていたみたいだな。
何をやってんだ? あいつは。一応、魔王だったくせに。
ちなみに影丸には念のためもっと広範囲に聞き込みを担当をしてもらっている。
「マサトさーん」
そこにミアやマッツ、ホルストが駆けつけてきた。
「おお、みんな来たか! ……って、なんだその恰好は……?」
現れた三人は全員、それぞれの帽子をかぶっており、身なりも……何というか、個性的だ。
ミアは青い髪をすべて探偵帽子にしまい、白い髭を生やし、魔力を秘めた杖を老人が扱う普通の杖のようにしている。
そしてマッツはニット帽をやたらと深くかぶり、黒い口髭と色の入った眼鏡をかけており、もうちょっとした不審者にしか見えない。
「聞き込みをするって聞いてましたので、怪しまれないように変装してきました! 魔法学園の者はそれだけで注目を集めますので、街中で聞き込みをしたら怪しまれてしまいますから」
「あ、えーと、僕は、この街では顔が……特に歓楽街の方は勘弁してもらいたいと……あ! いや、ロイス家の人間がこの辺りを歩けば噂になる。それで大事になってしまえば、魔王の間者の捜索に支障をきたすと思ったのだ!」
「余計、目立つわ! 普通の格好してこい、普通の! 変装するなら庶民の格好で!」
「そんな、マサトさん、一生懸命、考えてきたのに……」
「マサト! せめて顔だけは! 顔だけは隠させてくれ!」
「いいから、着替えてこい! 動きやすい格好でいいから」
まったく……どういうセンスしてんだ。
まあ、マッツの担当は歓楽街周辺に決定な。
お前は詳しいんだろ? この辺。今度、婚約者にばらすぞ。
それで……一番の問題は、と。
「ホルスト……一応、聞くがその恰好はどういう意味があるんだ」
「はい……私は聖職者です。俗世のこのような歓楽街近くの場所に身を置くことは本来できないのです。正直、今、私は神に仕えるものとして、この場所に立つだけで、とても恥ずかしい。もし、私を知る信者に会おうものなら……私は。ですが今回は魔王の配下を探すためという使命があります。ならば、せめて聖職者ということがバレないようにしたいと強く思ったのです」
「ははーん、それはよく分かったが……それでその恰好か」
「はい、これなら絶対にハイプリーストあることは分かりません。私から最も遠いイメージのものを、と考えぬいてきましたから」
こいつ……わざとやってんのか?
ホルストの格好は……全身を黒い皮であしらえたスーツのような恰好をし、所々に鎖がたれている、さらに帽子は そのこの世界にもあるのか、と驚くが、ポリスハットとしか思えない。
なんと表現したら……、
いや、というより一つしか表現が浮かばん、
それ……さ、俺の世界で言う……
ただのハードゲイだから。
さらに言えば、お前のイメージにピッタリだ。
何の違和感もないよ?
変装どころか、お前の正装だよ、それ。
「もういいや……ホルストは本当の自分に出会えたってことで」
「は?」
「いや、じゃあ、みんなにはこいつを探してほしいんだ」
俺は三人に影丸が追加で描いてくれたマオの似顔絵を渡した。
「この人が魔王の……配下。人間にしか見えませんね、怖いです」
「ほほう……よく描かれている。うん……? うーん? この顔……どこかで」
「この者が邪悪な魔王のてのものですか……」
「いいか、こいつの情報が手に入ったら必ず俺に報告をくれ。それと万が一、見つけたとしても絶対に一人では突っ込まないこと」
もし、倒したりでもしてしまったら、俺が魔王確定になっちゃうからな。
「いいか? 何か分かったら絶対に俺に報告を入れること。これだけは必ず守ってくれ。特にミアとマッツ、ミアは殴ったりしてはダメだ。マッツは魔法は禁止だぞ」
「わ、分かりました! でも、マサトさん……私は魔法使いですよ? 殴るとかあり得ないです。注意事項を伝える相手を間違えています」
「そうだぞ、マサト。私が騎士、剣の使い手だぞ」
もう……本気で言っているのかな、この人たちは。
「分かった、分かった、じゃあ、聞き込みをする地域の分担を決めるから」
俺はそれぞれに分担する地域を伝え、歓楽街担当のマッツがとにかく嫌がるので婚約者レオノーラとジャクリーンなる女性の名前を出して大人しくさせる。
「よし、頼んだぞ。どんな些細な情報も報告を頼む。集合は夕方にこの場所で!」
俺がそう言い、三人と別れた。
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